カラオケよりバンドで歌うと疲れる人への対策方法

カラオケで歌うと大丈夫なのに、バンドで歌うと疲れる」ってのはボーカルなら経験あると思います
ベテランになると慣れてくるんでしょうけどね

原因としては、周りの楽器に負けないように声を張り上げてしまうケースが多いです
自分の声が聞こえないと、つい力が入ってしまいますよね
他にも、、、テンションが上がって身体が緊張したり
連続で歌って疲労したり(カラオケだと休めますから)
エアコンで乾燥してしまったり・・・などなど

まずは、ボーカルの声を聞き取りやすくするために工夫しましょう
スタジオは15畳くらいの狭いスペースなんで、ギターやドラムの音にボーカルが埋もれがちです
かといってマイクのボリュームを上げすぎるとハウリングします
ハウリングを防ぐ方法は、以前に「スタジオミキサーの使い方」や「マイクの使い方」に書いたので参考にしてください
簡単に言うと、マイクをスピーカーに向けないようにして、ミキサーのイコライザーのHiとLoを下げて、マイクになるべく口を近づけて歌う。です
これでハウリングを防止しつつ、声をしっかり拾えます

声が出てるスピーカーに背を向けてしまうと、当然自分の声が聞こえにくくなります
さらにマイクがスピーカー方向に向いてしまうため、ハウリングが起こりやすくなります
なので、ちゃんとスピーカー方向に顔を向けて歌いましょう

あと、極端に安いマイクを使わないこと。1万5千円以下のマイクを買うなら、スタジオ常設のSM58を使ったほうが良いです

周りの楽器がうるさすぎる場合もあるので、各パート適度なボリュームを心がけましょう
ボリュームだけでなく、ボーカルの帯域(音域)に音が重ならないように「楽器の音質」を変える方法もあります

ギターやベースが「自分の音が聞こえない」と言ってボリュームを上げすぎる事もあります
自分の音が聞こえないとアンプに極端に近づいて弾こうとするのですが、近づくよりも少し離れたほうが楽器の音がよく聞こえる場合があります
ボリュームを上げる前に、よく聴こえる「位置」を探してみましょう
ギターアンプの向きを変えるのも有効です。ギタリストにギターアンプを向けて、ボーカル方向に向けないようにするのも良いですね

私の場合ですが、どうしても自分の声が聞こえない場合は、片耳を塞いで骨導音を聞いて歌うこともあります
これはメリット・デメリットあるんですが、環境によっては有効な場合もあります。詳しくは→こちら

大事なのは「普段カラオケで楽に歌ってる感覚」を思い出しながらやることです
周りの音が爆音でも気にしないで、自分の歌い方を崩さないようにしましょう

声が小さい&聞き取りにくい人は、自分の声がよく通るように練習することも大事です
パワー(呼吸)も大事なんですが「響き」を上手く利用することが大事です
パワーだけで声量を出すと、すぐバテて喉を痛めるからです
詳しくはこちらの→「声量を上げる方法」を参考にしてください

ただし、声のボリュームは身体的な限界もあるので、良い声が出てるならボリュームに拘る必要もないと思います
プロの歌手でもボリュームが小さい人は沢山いますので

こちらも参考にしてください→ 喉のウォームアップ方法 喉に良い飲み物

ハスキーボイスの出し方。非整数次倍音(ノイズ)がある声

非整数次倍音の話の続きです
第1回「倍音には整数次倍音と非整数次倍音(ノイズ混じりの声)がある」
第2回「非整数次倍音を持ってる歌手って誰?」

今回は第3回、声に非整数次倍音を入れる方法です
これは歌の技術と言うよりも、モノマネの技術になってきます
ハスキーボイスのモノマネです

ハスキーボイスも色々ありまして
1、普段に話している声がかなり枯れてる人
(スティーブン・タイラー、森伸一、ビートたけし、桐谷健太など)


2、普段の声がややハスキーボイスで、歌うと部分部分でハスキーが強調される人
(ワンオクTaka、宇多田ヒカル、徳永英明、GLAYのTERUなど)


3、普段の声が普通で、歌うときにファルセットを使ってややハスキー気味になってる人
(平井堅?)

4、本来ハスキーとは呼ばないのだが、過度な声帯閉鎖や鼻腔共鳴、ハイラリでノイズが出てるパターン
(追記:舌の位置を「い」にすることで少しノイズが出るが、まぁ使うことはないと思う)


1と2の人は枯れている声帯を持っている人です。
声帯が上手く閉じずに、少し息漏れを起こしている状態です(声帯の健康的には悪い)
あまりにもハスキーがひどくなると天龍源一郎みたいになります
3は普通の声帯を持っているが、歌い方でややハスキーになっている
4はハスキーとは違うノイズで、どっちかと言うと耳障りなノイズになります

エッジボイスの話でも書きましたが、声にエッジ(ノイズ)を加えるには何種類か方法があります
大きく分けると「声帯」「仮声帯」「共鳴」です
ハスキーボイスは「声帯」で作ります(仮声帯も少し関係する)

「共鳴」でノイズを出すと言う人もいるのですが、共鳴でノイズを作るとしたら「4」にも書いたとおり過度な鼻腔共鳴やハイラリしかないと思うので、地声のままだとキンキンした耳障りな音になるはずです
あくまで声帯と仮声帯で「基礎のハスキー音」を作って、そこにハイラリなどで共鳴を付加させる方法になると思います

普通の人がハスキー声を出すなら、声帯を「地声とファルセットの中間」にする必要があります
つまり「息漏れを起こしている状態」を意図的に作るのです
ファルセットになりすぎると声自体が出なくなるので注意しましょう
その人がどんな地声を持ってるか?で変わってくるんですが、感覚的には「地声から少しファルセットにした状態」が良いと思います

で、ハスキーのザラザラした成分は、ハイラリにすると強調されます
地声のままハイラリにすると変な声になりますが、ハスキーでハイラリにすると良い感じになる場合があります
ハイラリとは喉仏を上げた状態で、アゴを前に出すとハイラリになりやすいです

声帯をハスキー状態で維持するには、声帯のコントロールと喉仏のコントロールが重要になってきます
やり方については下記の記事を参考ください
ものマネでミックスボイスの練習
声帯閉鎖のコントロール
喉仏と口で音質をコントロールする

ハスキー声は地声と比べてパワー感やボリュームが下がりますが、それはしょうがないです
ただ、マイクで音を増幅させると、ハスキー声のほうが「迫力」を感じることがあります
なぜなら「声を枯らして叫んでいる感」があるからです
普通の地声のほうがボリュームは上がるのですが、ハスキー声は感情に訴えかける要素が強いんです
エアロスミスのスティーブン・タイラーなんかも、決して「ボリュームのデカい声」を出してる訳じゃありません
どちらかと言うと彼はハスキーで繊細な声ですが、シャウトすると「すげぇ!」と感じますよね
これはボリュームがスゴイんじゃなくて、「叫んでる感」がスゴイんです


以上。今回はファルセットとハイラリでハスキーボイスを作る話でしたが、仮声帯を積極的に振動させて、それに地声を混ぜる方法もあります
ハスキーボイスよりさらにノイズを増加させたデスボイス的な発声で、一般的には使われませんけど
これは仮声帯発声の記事で詳しく書いてます

非整数次倍音の歌手は誰?

前回の話の続きです
倍音には整数次倍音と非整数次倍音(ノイズ混じりの声)がある。と前回に書きました

整数次倍音:力強い、頼りがいがある、ハッキリした声
非整数次倍音:味がある、親しみやすい、ハスキーボイス

ザックリ書くとこんな感じです
非整数倍音は耳障りなノイズを出してる声もあるので、全部が良いとは言えません

前回も書きましたが、B’zやTMレボリューションなんかは力強い整数倍音です
っていうか、だいたい整数倍音の歌手が多いと思います
ちなみに私の声も整数倍音が強いパワー系なので、逆に「味のある声」に憧れます

ノイズ混じりのハスキーボイスの代表と言えばスティーブン・タイラー。ラウドネスの二井原実とか
演歌だと森伸一。その息子のTAKAは整数のパワーもそこそこあって、さらにハスキー要素もあるオイシイ声
私の好きなスティーブ・ペリーも「整数のパワー&ハスキー要素」をミックスした声です
非整数の歌手は他にもブルース・スプリングスティーン、ブライアン・アダムス、リッチー・コッツェン、デヴィッド・ギルモア、ケニー・ロギンスとか・・・全部私の趣味ですが、みな味のある良い声をしてます(かと言って、ノイズが混じりすぎると天龍源一郎みたいになって、普通の歌に使えない声になってしまいます)

クラシックやオペラだと、ハスキーな声は悪い声に分類されますが、ロックやR&Bにはマッチします

この人たちは何でノイズ混じりの良い声を出すのでしょうか?
簡単な話です。元々そういう声だからです
以前も話しましたが、スティーブン・タイラーもTAKAも、普段のインタビューから「あの声」なんですよね
声帯閉鎖が弱いのか?声帯表面の状態が悪いのか?ノイズが混じるってのは声帯の健康的には悪い場合が多いです

「声帯から上の共鳴でノイズを作るんだ」って言う人もいますが、だぶん共鳴だと良いノイズは乗らないと思うんですよね・・・私の経験上ですが
声帯と仮声帯の使い方がポイントになると思います

次回は「ノイズを声に乗せる方法」です

整数次倍音・非整数次倍音での声質の変化

さて、今日は「倍音」と「声質」についての話です
以前スペクトラム・アナライザーエンハンサーの記事で、「倍音(ばいおん)」の話をしました

倍音というのは、元の基音に重なるようにして、その音より高い周波数の音が出ることです
例えばA3の音程を「あ~~」と出したとき
2倍の周波数の2倍音(1オクターブ上のA4)
3倍音(A4の上のE5)
4倍音(さらにその上のA5)
さらに5倍音6倍音・・・と次々と重なって音が出ることです
整数の倍音が出てるので「整数次倍音」と言います

こんな話をすると「すげぇ!どうやったら倍音を出せるんですか?」と言う人もいますが、普通に声を出すだけで倍音は出ます
人間の声は元々倍音が含まれいます
倍音がない音は「プー」とか「ピー」という電子音になります

裏声よりも地声のほうが倍音は多く出ます
以下の画像は330Hzの音を地声と裏声で出した波形です
普通に「あ~~」と声を出しただけです

どちらの波形も330が基本になって、その倍の660、990、1320、1650と倍音の山が出てますが、裏声は倍音の山が小さくなってますね
これが地声と裏声の声の厚みの差です

さて、次の波形を見てください
同じ330Hzの地声ですが、喉仏を極端に下げて声を出してます

同じ地声なのに、4つ目の山から極端に小さくなってますね
これは喉仏を極端に下げて、共鳴を低音重視にしたため、高域が削られたのです
(音程は330Hzのままで、音質だけが変わる)
330Hz~1KHz(1000Hz)までの周波数はよく出てますが、1K以降の音が弱くなってます(ちなみにパワーあるハイトーンを出すなら1K~4Kの帯域が超重要)

喉仏の上げ&下げ、どっちが悪いという事ではなくて、曲によって音質を使い分けようという事です
合唱を歌うときや、まろやかにバラードを歌いたいなら喉仏を下げ
明るい曲でハイトーン効かせたいなら、喉仏を普通の位置、もしくは少し上げたポジションにすると良いです(喉仏のコントロールは→こちら
ちなみに、ハイトーンを出すために極端に喉仏を上げるのは良くないです
中音が抜けたスカスカの声になって、ショボいハイトーンになります

で、その人の喉の太さや長さによって、どの周波数がよく響くかが変わってきます
太くて長い人は低域が響くし、細くて短い人は高域です
あとは、声帯の振動(声帯閉鎖)が地声寄りなら倍音が多くなり、裏声寄りなら倍音は少なくなる
ただし、必ずしも「倍音を多く出す=良い声」になる訳ではありませんし、「高域が強く出る喉=良い声」ではないので注意が必要です

さて、ここまでが整数次倍音の話で、次が非整数次倍音の話です
非整数次倍音とは、上記の写真のようにキレイに整数倍で山が出る事ではなく、細かいギザギザの山が出ることです
「倍音」よりも「ノイズ」と言ったほうが分かりやすいです
いわゆるハスキーボイスや、ガラガラ&ザラザラした声の人が、これに該当します

ノイズを最高に出す歌い方は仮声帯発声(デスボイス)です
(デスボイスの出し方は、こちらに詳しく書いてます)
普通の地声とデスボイスの波形の違いを見てみましょう

地声はちゃんと整数倍の山が200、400、600、800・・・とキレイに出てます
デスボイスの波形は、なんとなく山は分かりますが、整数の山の間に「ギザギザの山」が出てますよね
これが非整数次倍音と言われてるのですが、簡単に言えばノイズです
デスボイスは音程をつけるのが難しいです。なぜなら音の山が潰れて、何の音か判別しにくくなるからです

これだけノイズが出ると、普通の歌には使えない「悪い声」になるのですが、少量のノイズならカッコイイ声になるんです
私の好きなスティーブ・ペリーやワンオクのTakaなんかは、整数の倍音を出しつつ、ハスキーなノイズも少し混じっています
逆に、B’zの稲葉なんかは整数倍の倍音が強く、ノイズが無くパワフルな感じ
Takaはパワーはほどほどで、ノイズが少し混じった「味」がある感じ
歌手によって個性があるんですね

ちなみに私の声は、地声に近い声でハイトーンを出すので整数倍の倍音が強く、ハスキー要素も無いのでノイズが少ないです
なので、B’zの曲を歌うとハマるのですが、ワンオクをそのまま歌うとダメです
ワンオクは地声パワーを弱め、ノイズ混じりで歌う必要があるんですが・・・難しいのなんの(><)研究中です

話が長くなったので、次回に「非整数次倍音の歌手」や「ノイズを混ぜて歌う方法」について書きます

【呼吸】鼻から吸うか口から吸うか?

歌ってて息を吸うとき、鼻から吸うか?口から吸うか?考えたことはありますか?
人によって様々なんですが、結論から言えば「どっちでもOK」です
ただし口呼吸には少しデメリットがあります

口呼吸のデメリット
口・喉・声帯が乾燥する
唾を吸い込んで、むせる事がある
呼吸の音をマイクが拾ってしまう場合がある

てな感じです

ブレスのヒマが無いときは、口で吸ったほうが速いです
ロングトーンの前に、一瞬しか吸うヒマが無い曲とかありますからね
普段は鼻呼吸、ヒマが無いなら口呼吸。みたいに使い分けるのが良いと思います

「口から吸うと胸式呼吸になりやすい」という人もいますが、そもそも歌の場合は吸気で大げさな腹式呼吸をやる必要はありません
吐く時はしっかり腹式を意識したほうが良いですが、吸うときはそんなに意識しなくても大丈夫だと思います
たまにボイトレで「息を吸うときに腹と背中を膨らませて、奥まで空気を入れろ」とか言いますが、息の吸いすぎは良くない場合があります

腹式呼吸の話」でも書きましたが、歌で大事な事はしっかり息を吐くことです
ちゃんと息を吐けば、肺の中が陰圧になるので、それなりに空気が入ってきます
肺の空気を全部交換する必要はありません。適量の空気が出入りすれば十分なんです
なので、「吸う」ことよりも「吐く」ことに意識を集中してください

ちなみに「腹式呼吸は必要ない」という意味ではないので注意してください
横隔膜を使う呼吸は全部腹式呼吸なので、腹式呼吸じゃないと人間はマトモに呼吸できません
ただ、吸うときに大げさに腹や背中を膨らませる必要はないという事です
歌の腹式呼吸と、ヨガや太極拳で使う腹式呼吸は違います
腹式呼吸の詳しいメカニズムは、腹式呼吸の話を読んでください