ものマネでミックスボイスの練習(声帯閉鎖コントロール)

声帯のコントロール(概要)高い声が出る仕組みで書きましたが、地声→ミックスボイス→裏声をスムーズに繋ぐには、高い声に移るにしたがって、少しずつ声帯の閉鎖を弱める必要があります
今回はその練習方法を書きます

まずこちらの記事を読んで、リップロールが出来る人は、まずその練習をしましょう
何事も呼吸が基本なんで

本来ミックスボイスを出すには、地声と裏声を両方ちゃんと出せることが重要なんですが、ここでは回りくどいことを抜いて、手軽な方法をご説明します

私がオススメする練習法は・・・北斗の拳のケンシロウの真似です(笑)
ふざけてません、本当です
え?ケンシロウを知らない?この人です↓
https://youtu.be/gplh7VWmsng?t=1224

ちなみに最近の声優じゃなくて、初代の神谷明さんの声が理想です

おお~~あたたたたたたたたたた!

最初の「おお~」の部分は地声で出してください(これ重要)
ケンシロウが力を溜めているときの声です「おお~」

「あたたたた」の部分はヘッドボイスと言って、裏声よりちょっと声帯閉鎖が強い状態です(まぁざっくり裏声と考えてもらってOKです)

で、「おお~」から「あたたた」をゆっくり繋いでみてください
「おお~~~~~ぁぁぁぁぁあたたた」みたいな感じで
ゆっくり繋ぐのが難しければ、早く繋いでやってみてください
「おお~あたたた」みたいな感じでも、初心者の段階ならOKです

この間の「~~~ぁぁぁ」の繋ぎの部分がミックスボイスです
「たたたた・・・」の部分はヘッドボイスなので、あまり練習しなくていいです
大事なのは繋ぎの部分です

おお~~~~ぁぁぁあたたたたたたたたたた!
この赤字の部分をゆっくり重点的に練習してください
これが地声→ミックス→ヘッドボイスを、ゆっくりスムーズに移行する練習です
これが出来るようになったら、逆に上から降りてくるパターンもやってみてください

これは特殊な練習ではなく、ボイトレだと「サイレン」という練習になります
「ウ~~」というサイレンの真似を、ケンシロウに置き換えただけです

で、この練習をやっているときは、共鳴のことは気にしなくてOKです
共鳴とは、いわゆる「鼻に響かせる」とか「喉に響かせる」ってやつです
この練習は声帯閉鎖のコントロールの練習なんで、よけいな事は考えずに声帯の動きだけに集中してください。共鳴は共鳴で別の練習をします

注意しなければいけないのが、「おお~~~あたた」に移るときに、逆に声帯に力を入れてしまうパターンです
「お゛お゛~~~~あ゛だだだだ!」みたいになるとダメです

こういう状態になる方は、まず裏声を軽く出す練習が良いと思います
狼の遠吠えの「ワオーーン」とか、レイザーラモンの「フォーーーウ」の真似が良いかもしれません
この練習に限らず、何かのモノマネをやることで、コツが簡単に掴めることがあります
「志村けん」の真似も使い方によっては有効です(^^;)また後日

鼻腔共鳴の本当のところ。軟口蓋は意識する必要なし

注意:鼻腔共鳴という言葉を知らない人は、あえてこの記事を読む必要はありません。 鼻腔共鳴は歌にほとんど関係ないからです。
鼻腔共鳴について悩んでいる方は読んでください。

今回のまとめ
・鼻腔共鳴は少しだけ起きれば良い
・過度の鼻腔共鳴は逆に音を減衰させる(アンチフォルマント)
・軟口蓋が上がると鼻腔共鳴が抑えられて響きが大きくなる。下がれば鼻腔共鳴が起きて音が減衰する(←逆だと勘違いしてる人が多い)
・普通に発音して歌ってれば軟口蓋は自然に上がるので、軟口蓋を動かすような無駄な力はいらない
・共鳴で音質が変わっても、音程が高くなることはない


ボイトレを勉強していると、鼻腔共鳴という言葉をよく耳にすると思います
「高い声を出すには鼻腔共鳴が必要」
「鼻腔共鳴させると明るい声になる」とか言われます

結論から言うと、通常は高い声を出しても鼻腔共鳴はほとんど起きません
実際には「口腔に響いた高音が、骨を伝わって鼻に振動を感じる」のです
ほとんどの人が、この「口腔に響いた高音」を「鼻腔共鳴」と勘違いしてます
これは鼻腔共鳴ではありません

本当の鼻腔共鳴は「喉と鼻の通路を開く」ことです
喉と鼻の通路が過剰に開くと悪い声になります。これは「やってはいけないこと」です


それと、音程(ピッチ)は共鳴では決まりません。声帯振動で決まります
鼻に響かせたり喉に響かせたりで音質は変わりますが、音程を上げるなら声帯振動を変える必要があります(かなり厳密に言うと、共鳴腔の形が声帯振動に少し影響する)

鼻腔共鳴が起きてるか?を簡単に証明する方法があります。鼻をつまんでラララ~と歌ってみましょう
少し歌いにくくなると思いますが、ほぼいつもと変わらぬ声が出せると思います
鼻をつまむと鼻腔共鳴ゼロの状態です

鼻をつまんだ状態で「ほとんど声が出せない」としたら、「過度に鼻腔共鳴」するクセがついてます。これは「開鼻音」という悪い状態で、詳しい説明は後で書きます
「ちょっと歌いにくいけど、ほぼ普段の声を出せる」なら、適度な鼻腔共鳴です
「鼻をつまんでも普段と全く変わらない」という人は、全く鼻腔共鳴させてない可能性があり、これはこれで問題です
※鼻をつまんで歌うと鼓膜に負担がかかる場合があるので注意しましょう

本当の鼻腔共鳴(喉と鼻の通路を開くこと)は少しだけ起きれば良いのであって、過剰に鼻に共鳴させたり、全く共鳴させないのは問題ということです
例えば、鼻づまりの状態になると完全に鼻腔共鳴が無くなるので良くないです
過剰な鼻腔共鳴が悪い理由を以下に書きます

人間の口の奥には軟口蓋という蓋があって、口と鼻の通路を開いたり閉じたりします
呼吸時はブランと下がって開いてますが、食物を飲み込む時は、鼻に逆流するのを防ぐために閉じます
(ちなみに気管への食物の進入を防ぐのは喉頭蓋)

つまり、軟口蓋が下がる=鼻への通路が開いている
軟口蓋が上がる=鼻への通路が閉じる。
ということです
これを逆だと勘違いしてる人が多いです

ウチにある本から写真を拝借しました (解剖生理をおもしろく学ぶ  サイオ出版)

軟口蓋にはもう一つ役割があって、発音に関係します
人間は言葉をしゃべるとき、自然と軟口蓋が上がって、鼻との通路を塞ぎます
塞がないと、上手く発音できないからです
ただし「なにぬねの・まみむめも・ん」の発音時は、軟口蓋が下がって鼻腔に声が響きます。
なので鼻をつまむと「ん」は発音できませんし、「なにぬねの」も言いにくいです
全く鼻腔共鳴がないと、一部の言葉を上手く発音できません。なので鼻詰まり状態は良くないのです
(ちなみにイヌやネコには軟口蓋が無いらしいです。だから喋れないらしい?)

病的な理由で軟口蓋が動かない、あるいは穴が開いてる状態になると、声が鼻に漏れてマトモに発音できません。常に鼻腔共鳴してる状態です
これを「鼻音化」あるいは「開鼻音」と言います
過剰に鼻腔共鳴させてしまうと、特定の周波数が鼻の空間に吸収されて、口から出る音が弱くなります(アンチフォルマント)
つまり、過剰な鼻腔共鳴は変な発音になり、共鳴するどころか逆に音が吸収されるのです

以下の動画は「母音の鼻音化」の実験動画です
「あ~~」という発音は鼻腔に響かせない発音なのに、わざと鼻に響かせる実験をやってます

ボイトレで「軟口蓋を上げろ」とか「のどチンコを上げろ」とか言われることが多々あります。YOUTUBEでもそんな動画がたくさんあります。
しかし軟口蓋は発音時に自然と上がる構造になってます。そして軟口蓋が上がると鼻への通路は閉ざされます
本当に鼻に響かせるなら軟口蓋を下げる必要があります
で、軟口蓋を下げて鼻腔共鳴させると声が弱くなります

軟口蓋や「のどチンコ」を無理に上げようとすると、自然な歌いまわしが出来なくなります
これは実例であったのですが、某ボイトレで「軟口蓋を上げた状態を維持しろ」と言われ、それを頑固に守ってる人がいました
必死に口を大きくカパーッと開けた状態で歌うので、歌詞に全く表情をつけられない人でした・・・オペラとか合唱やるならコレで良いんでしょうけどね
(大きく口を開けたところで、軟口蓋とは何の関係もない)

ハミングの練習はどうなのか?
ハミングは、口を塞いで鼻から息を出しながら歌う練習です
まさに鼻腔共鳴そのものの練習ですが、先に説明したとおり、過剰な鼻腔共鳴は必要ありません
鼻づまりのように、全く鼻腔共鳴しない人を改善させるには良いかもしれません(鼻から息が吸えないような状況なら耳鼻科へGo)
ハミングの有効な使い方は、共鳴のポイントを探る練習です
ハミングしながら喉仏を上下にコントロールすることで、振動するポイントが上から下(口腔から喉)と変化するのを感じるツールとして良いと思います

私はボイトレスクールでハミングで鼻に響かせる練習をやりましたが、結果ハイラリ&鼻声でキンキンした変な発声になりました
その後、自分で勉強して、喉仏を下げる練習をして、鼻をつまんで歌う練習をして過度な鼻腔共鳴を改善させたら、劇的に声質が良くなりました

ボイトレに行くと必ずハミングやる所が多いですが、どういう目的で使うのか?をよく考えたほうが良いと思います

リップロールをやってみよう

今回のまとめ
・リップロールで歌うと「呼吸」と「声帯閉鎖」の練習になる
・バックプレッシャーがかかって声帯振動が整う(らしい)

・一定の量の息を安定して出す練習になる
・声帯閉鎖が強くて、地声で力んでしまう人に良い
・声帯閉鎖が弱い人には逆効果かもしれないので注意

前回の記事で「ボイトレでやるべき事は個人個人で違う」と書きましたが、最初のうちは「コレやっとけば、だいたい間違いない」という練習方法があります
(あくまで私が個人的に考えることなんですが、、、)

それはリップロールです
リップロールしながらメロディを歌うんです

・・・なんだよ、そんな単純な事かよ!と思うかもしれません
しかし、目的意識をもってリップロールするのが大事なんです

一番最初の記事にも書きましたが、歌の上達は 呼吸・声帯・共鳴を自在にコントロールできるようになることです
リップロールはこの中で一番難しい「呼吸」と「声帯の閉鎖」の改善に役に立ちます
しかもこの練習は声帯への負担も少ないです

声帯閉鎖のコントロールでも書きましたが、地声から裏声に上手く移れないのは、声帯の閉鎖が強すぎるパターンが多いです(中にはその反対の人もいますが)
声帯の閉鎖が強いということは、息を吐けてません
逆に息を吐けるということは、声帯閉鎖が弱いということ
ならばリップロールで息をしっかり吐きながら歌うクセをつければ、声帯の閉鎖も弱まるのでは?という発想です(この方法で何人か実験して上手くいってます)

例えばですが、地声で吐いてる息の量が「5」だとします
ため息で吐く量が10、息を止めると0とします
数字が多いほど、肺から出る息の量が増えます

ため息 10
ファルセット 8
裏声 7
ミックスボイス 6
地声 5
力んだ地声 4
ボーカルフライ 1
息を止めている 0

声帯閉鎖が強い人は、閉鎖が強いために4~5の量の息しか吐けません
リップロールで歌っているときは7~8の量の空気が声帯を通過します
7~8の空気の量を出す感覚に慣れると、普通に歌ったときに5.5くらいに落ち着きます(笑)
5.5って微妙な数字ですが、5→6のミックスボイスに移る橋渡しです
上手く地声からミックスボイスに移れる人は、常に5.5くらいの息の量(声帯閉鎖)で歌って、5.7→6→6.5など、さらに微妙に声帯閉鎖をコントロールします
例えば6の息の量なら強いミックスボイス。6.5なら弱いミックスボイス。7になると息混じりのファルセット。みたいな感じです

注意点
リップロールは小刻みに唇をプルプルさせるのが正解で、ブルン!ブルン!とさせるのは間違いです。これは8~10の息が出ているので多すぎです
唇を固く閉じて「ぶぶぶーー」とやるのも間違いです
目安として、15秒~30秒くらいプルプルさせてください
「ブルン!ブルン!」だと10秒くらいで肺の息が全部出てしまいます
「ぶぶぶーー」だと息を止めてる状態と変わらないので、30秒経っても肺に息が残ってると思います

あと、声帯閉鎖が弱く、ファルセットみたいに息がスカスカ抜けてしまう人は、リップロール練習は逆効果になるかもしれません
声帯閉鎖が強い人には、良い練習になると思います

「ハミングじゃダメなの?」と思うかもしれませんが、ハミングとリップロールは目的が違う練習です。ハミングは声帯閉鎖を強くした状態でもできるからです
個人的には、ハミングやストローエクササイズは、少ない息の量で行うエクササイズ。リップロールやタントリルは多い息の量で行うエクササイズだと思ってます
ストローエクササイズについては→こちら

「リップロールをやらなくても、裏声やファルセットで歌えば声帯閉鎖が弱まるのでは?」とのご意見もあるかもしれません。それも一理あります
リップロールで歌うトレーニングの良いところは、唇が抵抗になって呼気が少しせき止められ、声帯にバックプレッシャー(空気の圧力)がかかって声帯振動を整える点です
さらに、呼気がせき止められるので、声帯はリラックスしながらも、一定の量の息安定して吐かないと、リップロールは上手くできません
ファルセットだと、モワッと何の抵抗もなく息が出てしまい、呼吸の練習にはなりません
裏声は声帯に負担をかける場合もあるので、多用するのは良くないです

一番の問題は、リップロールが出来ない人がいることです・・・
唇の両端をちょっと持ち上げるとプルプルしやすくなります
あと、唇が濡れているほうがプルプルしやすいので、風呂場なんかで練習すると良いです

声帯閉鎖のコントロール(概要)

声帯閉鎖の解説図です
大きく画像表示する場合は→こちら

真ん中の「白い部分」が声帯です
左から右にいくほど声帯が開いて、息が漏れやすくなります
絵は分かりやすくするため簡潔にしてます。記事の下に載せてる動画がリアルな声帯の動きです

←左から解説していきます
・1番左は「息を止めている状態」です。声帯は完全に閉じています
重い物を持ち上げるときや、ウンコをするために腹圧を上げている時の状態です
声帯がギュッとくっついて、肺の中の空気を漏れないようにします

・左から2番目は、ボーカルフライ(呪怨ボイス)を出すときの状態です
閉鎖した声帯から空気がプツプツとわずかに漏れている状態です
ボーカルフライについては今後また解説していきます

・3番目は地声で、普通の会話の状態です
肺から空気が出て声帯の間を通り、声帯が大きく振動します
ボリュームの大きい声を出せます

・4番目は裏声です。声帯が伸ばされて、声帯の表面だけが振動しています
ボリュームは落ちますが、振動スピードが増えるので高い声が出しやすくなります

・5番目はファルセットです。声帯の閉鎖がかなり弱くなって空気がかなり漏れます
図書館でヒソヒソと話すときの状態です
優しく静かに歌いたいときに使います

・1番右は呼吸をする時です。声帯はまったく振動しません

声帯の閉鎖が強くなれば、息は肺から出にくくなります
声帯の閉鎖が弱くなれば、息は肺から出やすくなります

歌で使うのは主に地声~裏声~ファルセットまでです
ボーカルフライはめったに使いません
地声と裏声の間に、ミックスボイス・ヘッドボイス・シャウトがあります

声帯は「閉じる・開く」の他に、「縮む・伸びる」の動きもあります
高い声を出すとき、声帯は筋肉によって引っ張られて伸ばされます
伸ばされた時に、声帯の閉鎖が強い「地声」のままだと、スムーズに高い声に移行することができません

詳しくはこちらの「なぜ高い声が出るのか?良いハイトーンと悪いハイトーン」を読んでください

高い声に移行するときは、少しずつ声帯の閉鎖を弱める必要があります
しかし、ファルセット状態まで弱めてしまうと声がスカスカになりますので、地声と裏声の間で練習します
地声から裏声はスイッチのようにON/OFFで切り替わるわけではなく、その中間の段階がたくさん存在します。コレがミックボイスと呼ばれます
地声に近いミックスもあれば、裏声に近いミックスもあるわけです

声帯は指先くらいの大きさしかありませんので、コントロールはミリ単位で超緻密です
例えて言うなら、指でアリンコを潰さないように、つまむ感じです

なので、ボイトレは喉の筋肉や声帯のパワーを鍛えるのではなく、コントロールの方法を身につけるという事です(時には筋力を使う場面もありますが)
具体的な練習方法は→こちら

声帯の動画:↓2:45くらいから本物の声帯の動きが見られます
裏声だと声帯は少ししか振動せず、地声は大きく振動してるのが分かると思います

発声のコントロール(概要)

これからブログのネタにする事を、ざっと赤字で書いてみました

ちなみに元の解剖図はウチにある本を写真で撮ったものです。
図を使わせてもらったんで宣伝しときます。生理学の基礎を知るには良い本です
(解剖生理をおもしろく学ぶ サイオ出版)

色々書いてあって、何が何だか分からないと思います
この図を見ただけだと、具体的に何をやれば良いの?という感じですよね
今後、ここに書いてある事を1個1個掘り下げて書きます