【動画付】正しいデスボイスの出し方。仮声帯発声。擬似ハスキーボイス

今回のまとめ
・仮声帯発声はファルセットなみに息を吐く(ベルヌーイ効果を使う)
・声帯は開いたまま仮声帯を締める
・喉仏を下げたほうが仮声帯が鳴りやすい
・「声帯が痛い」と感じたら、その方法は間違っている

・ボーカルフライで振動させる感覚とは違う


今回はデスメタルなどの歌唱で使うデスボイスの出し方を解説します
これは文章では説明しにくいので、↑の動画を参考にしてください

デスボイスと言ってもグロウルとかガテラルとかフォールスコードスクリームとかいろいろ種類があります
声帯を締めて出すボイスもあれば、弛めて出すボイスもあります

今回はその中でも「仮声帯」を使う発声を解説します
下水道ボイス」とか言われます
(私はデスボイスの正確な名称は分かりません。分類は他の方にお任せします)

まずは声帯の断面を見てください

ウチにある本から画像を借りました 解剖生理をおもしろく学ぶ サイオ出版

声帯ヒダ」が通常の発声で使う声帯です
その上にある「前庭ヒダ」がいわゆる「仮声帯」です
この仮声帯を振動させて音を出します
この下に肺があるので、息は下から上に流れます

何が難しいかと言うと、仮声帯を鳴らすには、喉を締めて仮声帯を寄せて、そこに空気を当てる必要があります
声帯が開いてないと、仮声帯を振動させる量の空気が流れません
つまり「声帯は開いたまま仮声帯だけを締める」必要があります

まぁ仮声帯を締めると言っても、完全に閉じるわけではありません
正確に言うと「寄る」です。寄って振動するんです
そんな器用なこと出来るのか?と思いますよね

実は、Youtube等でデスボイスを出してる方でも、これが出来ている人は少ないです
仮声帯発声と言いながら、声帯で「ぎゃぁぁ!」と歪みを出してる方が多いです
(声帯で歪ませるデスボイスもあるが、それは仮声帯発声とは呼ばない)

声帯で歪ませると声帯を痛めます、仮声帯メインで歪ませれば負担は軽いです
それに、声帯で歪ませると「ただの苦しそうな人間の声」になって、耳障りな高音がキンキン出るだけでカッコ良くありません
仮声帯中心に振動させると「人間じゃない声」になって、耳障りじゃない歪みになります
ギャギャーうるさい声を出すことがデスボイスではありません。本当に上手い人は心地良い歪みを作り出します(ギターの安いディストーションと、高級真空管アンプの違いみたいな感じ 笑)

さて、仮声帯を振動させるには、仮声帯を喉の筋肉で寄せて、そこに大量の息を流す必要があります
ベルヌーイ効果というものがあって、勢いよく息を吐くと、その周辺の圧力が低くなって、周りのものを吸い寄せます
シャワーを浴びていて、水にカーテンが吸い寄せられる現象です
(詳しく知りたい方は動画を検索してみてください)

喉の筋肉の力で仮声帯を寄せて、さらに呼気のベルヌーイ力(りょく)でも寄せる
W効果です。すると仮声帯が振動します

息をたくさん吐く必要があるので、声帯が地声の状態ではダメです
上記の動画を2つ見ていただければ分かりますが、地声の状態では声帯閉鎖が強く、声帯が空気抵抗になるので、息を多く吐くことができません
仮声帯を鳴らすにはファルセットなみに息を吐きます

なので、よく言われる「ボーカルフライで仮声帯を振動させる」の感覚とは違います
ボーカルフライは、声帯閉鎖を地声よりさらに強くして、息が吐けない状態になってます
これは「声帯も振動させながら仮声帯も振動させる」的なアプローチで、喉ベースのような音を出すときの方法です

さて、その練習方法ですが、これは文章では表現しづらいです。
以下の文章と、冒頭の動画を参考にしてください
※痛みを感じたら中止してください

目標は「声帯を開いて、仮声帯を締める」ですが、いきなりコレは難しいので、まずは「声帯も仮声帯も両方締める」から練習します

喉仏を下げます。おもいっきり下げます
(喉仏が動きにくい方は、まずそこから練習しましょう)
喉仏を下げながら口を縦に開きます。おもいっきり開きます
ムンクの「叫び」みたいな顔になりましたか?

その顔のまま、胸の前で両手を合わせて、息を止めてギュ~~ッと押し付けましょう
全力で硬い物を押しつぶす感じです
そのときに、息が漏れると「ウッウッウッ・・・」みたいな「しゃっくり」みたいな音が、ほんの少し出ませんか?
これが仮声帯振動の元です
で、今度は「ウッウッウッ・・・」じゃなくて「オッオッオッ」と言ってみましょう

このときに喉の奥で「キュッ」と締まっている感覚があると思います
感覚的には、「アゴのすぐ下」あたりを締める感じです
その部分を締めたまま、声帯を開いて息を吐きます

感覚が分かってきたら「オ~~~」と伸ばします
声帯は閉鎖をどんどん弱めて、息の量をファルセット並みに吐きます
(動画1のビニール袋に息を吐いてる部分を参考にしてください)

この練習の良いところは、「声を出さなくても仮声帯を寄せる感覚が掴める」ことです。いきなり声を出しながら仮声帯の寄せ方を探ると、その過程で喉を痛める可能性があります。
この練習は、最初の段階でまず仮声帯を寄せる感覚を掴んで、取得したら声を出すようにしています

練習は出しやすい音程でやってください。低音のほうが出しやすいと思います

純粋に仮声帯だけが振動すると、声帯は振動しません
喉仏を触って、地声と同じような振動をブルブル感じたら、仮声帯じゃなくて声帯振動になってます
まぁ慣れないうちは声帯振動も混じってくると思います
実際に歌うときは、仮声帯と声帯の音を混ぜて出したり、純粋に仮声帯だけの音を出したりと、色々と使い分けます

喉仏は下げたほうがやりすいと思いますが、慣れると喉仏を上げても出来るようになります
あとは舌や口の形を変えたりして、いろんなバリエーションを生み出します(動画2)

これが出来ると、ハスキーボイスみたいな声も出せます
ただし、あくまで擬似ハスキーなんで、本物の洋楽アーティストみたいに歌うには素質と練習が必要です

最初はかなり息を吐く力を必要とします。腹横筋のパワーが必要です
しかし慣れてくると、そんなに息を吐かなくても出せるようになります
ベルヌーイ効果に頼らず、筋肉で仮声帯を寄せるコツが分かってくるのです
そうなると、かなり楽にデスボイスが出せますし、息を節約できるのでデスボイスでロングトーンも出せるようになります

仮声帯発声のコツは、「ゲロを吐くように」とか「咳こむように」とか言われますが、「ゲホッ!ゲホッ!」みたいに声帯に力を入れてやってしまうと、かなりの負担がかかります
「声帯が痛い」と感じたら、その方法は間違っています
あと、他人の方法が自分に合うとも限らないので、この文章もあくまで参考にしてください

声帯閉鎖についての知識をつけると、デスボも理解しやすいです→こちら
5/11追記:非整数次倍音(ノイズ)の話を追加しました→こちら
デスボイスの声帯を撮影した動画を追加しました。Uの字になってる骨みたいなやつは喉頭蓋。その奥に仮声帯、さらに奥に声帯があります。
デスボイスの時は仮声帯が寄って振動しています
普通に声を出しているときは仮声帯が離れて、奥の声帯まで見えます

喉のコンディションを整える。ウォーミングアップ方法

ウォーミングアップはとても大事です
歌うとき声帯は1秒間に何百回~何千回も振動します
さらに声帯を動かすのは筋肉なので、運動前のようにアップする必要があります
急に歌うと痛める原因にもなりますし、なにより練習効率が悪くなります

私の場合、温まらないと地声から裏声が上手く繋がりません
出るはずの声が出ない。そうすると無理な力が入って、悪い発声になります

ウォームアップのやり方は人それぞれですが、私のやり方を書きます
まずリップロールしながらブラブラと手を振ります。タコみたいに
リップロールを続けながら首周りと腰(腹横筋)をストレッチします
さらにストレッチしながらボーカルフライをやります
(ストレッチと発声を一緒にやるのは、単に面倒だからです)

その後に喉仏を下げるストレッチ。低い声で「ぐっぐっぐっぐ~~」と発声しつつ喉仏を下げます
喉仏がスムーズに下がってくれないと、歌ってて喉が絞まりやすくなります
次に、喉仏を下げた状態で、中低音を地声で歌ってみます

最後に地声から裏声までゆっくり繋いで、ちゃんと声が出るかチェックします
前に説明したケンシロウの真似みたいな感じです「おお~~ぁぁぁああ」
切れ目なく繋がればOK。どこかでブツッと途切れたら、もう少し上記のウォームアップをやります
それでも繋がらない場合は、その繋がらない部分を何回か繰り返し練習します
声帯の調子が悪い日は、どうやっても繋がらないときがあります

そういう時は、それなりの歌い方をするしかないです
例えば、いつもは「地声5:裏声5」くらいのミックスボイスで出せる音が出ないと、そのぶん地声で踏ん張って「地声6:裏声4」になります
するとたいてい音を外します

声帯が乾燥して調子が悪かったり、前日の練習のダメージがあると、声帯の表面が荒れます。荒れるとスムーズに振動しなくなります(酒も悪いらしい)
これは地声よりも裏声に影響します(私の場合ですが)
地声は声帯を大きく振動させるから影響は少ないんですが、裏声は表面だを振動させるので、その表面のコンディションの影響が大きいような気がします
で、裏が出ないなら地声で。となっちゃうんですね

ライブやカラオケの間奏中も、こっそり上記のアップをやると良いです。声が少し回復します
「リップロール」や「喉仏を下げるストレッチ」や「低音ボーカルフライ」が良いです(マイクから離れて声が入らないように注意しましょう)
間奏でガブガブと水を飲む人がいますが、声帯を水が通るわけではないので、たくさん飲んでも意味がありません
もし飲むなら、チビチビと何回もゴックンすると良いかもしれません
物を飲み込むときは喉仏が上下に動くので、それが良いストレッチになるんじゃないかと思ってます

こちらの記事もご覧ください→「喉に良い飲み物

革新的でもないのに新しいボイトレ用語を作るのやめて

実は私、ミックスボイスという言葉が嫌いです
なぜなら「ミックス」という言葉の解釈を誤解してしまう人がいるからです
2つの音を同時に出すの?とか勘違いしてる人もいます
できれば、ミックスボイスじゃなくて「地声と裏声の間ボイス」と言いたい。え?長い?
でもこういう言葉のほうが誤解が生まれないと思うんですよ

他にもヘッドボイスとかミドルボイスとか色々用語がありますが、もうこれ以上 抽象的なイメージで新しい言葉を作るのはやめてほしいです
最近ネットで、「ブ〇ーボイス」とか「レッ〇ボイス」とか意味不明のネーミングを付けてる人を見ました。なんじゃそりゃ(><)
普通に「地声」と「裏声」って言えば良いんじゃないの?

こういうのはボイトレに限らず、いろんな分野に見られます
例えば、ダイエット方法で「〇〇式」とか「〇〇するだけダイエット」とか、結局はカロリー制限と筋トレなんだから、たいそうな名前をつけないでほしい

まぁそれが「商売」なんですけどね。知識のない人はそういうのに群がります
例えば「きのこの山」の商品名を「シャンピニオン・モンターニュ(フランス語)」にして銀座で売ったら、たぶん1箱1000円くらいで売れるわけですよ
で、頭の良い人は気づくんです「これ・・・きのこの山じゃね?」って

よほど革新的で新しいことなら新ネーミングを付けても良いですけどね

【動画付き】なぜ高い声が出るのか?良いハイトーンと悪いハイトーン

まずこの声帯の動画をご覧ください(ちょっとグロい映像です)
女性の声帯のようで、男性よりも声帯閉鎖が弱い感じです
高音になるにつれて声帯が伸びて、低い声で縮みます
声帯の間が広がって息が漏れるとファルセットになります
ちなみに、ゆっくり振動してるように見えるのは、振動が早すぎてカメラで撮れないからです。実際は1秒に数百~数千回で高速振動してます

声帯閉鎖のコントロールでも書きましたが、高い声が出る仕組みについて補足します

声帯はギターの弦に例えられますが、人間の喉は管楽器みたいなものです
ただし、ギター弦に例えると説明しやすいので、今回はギター弦をイメージしてください

ギター弦の音程を高くするには3種類の方法があります

1、フレットを押さえる(弦の振動する部分を短くする)
2、弦を引っ張る(弦のテンションを上げて固くする)
3、細い弦に変える(細い物体のほうが振動スピードが上がる)

これを声帯に当てはめると

1、声帯の振動する部分を短くする
2、声帯を引っ張る
3、声帯の振動する部分を薄くする

となります(実際はもっと複雑なのですが、簡略してます)
絵で説明すると

一番左は普通の地声です。全体が大きく振動しています
1の状態は、声帯閉鎖を強めて上半分しか振動してません
2の状態は、声帯を引っ張ってます
3は声帯閉鎖を弱めて声帯の間に空間があります。すると表面の薄い部分しか振動しません。厚いものが振動するより、薄いものが振動したほうが高音が出やすくなります

1~3どれでも高い声を出せるのですが、
1の声は、苦しそうな地声になります
2の声は、声帯閉鎖が弱ければ「フォーーウ」という裏声。閉鎖がほどほどならミックスボイス。閉鎖が強すぎると苦しそうなハイトーンです
3の声は、声帯がストレッチされてれば「フォーーウ」という裏声になり、ストレッチされてなければ低い声のファルセットになります

1の方法はダメです。良い声が出ませんし、負担も大きいです
一部の激しいヘヴィメタルでしか使いません

2と3は裏声です。声帯が伸ばされて、さらに声帯閉鎖が弱まって振動する部分が薄くなるのです

で、地声から裏声の間にあるのがミックスボイスです
地声の状態から声帯を伸ばしつつ(2)、声帯の振動する部分を薄くする(3)
ONとOFFで切り替えるのではなく、その中間の状態があるわけです
まず裏声をしっかり出せるようになったら、地声と裏声を繋いでみましょう
具体的な練習は→こちら

ちなみに、ボイトレ系のサイトで「1の状態でハイトーンを出す」と説明してる所がたくさんあります
絵が間違ってるだけなら良いんですが、レッスン内容も間違ってたりします
プロのトレーナーでも勘違いしてる人がいるので注意しましょう(><)

片耳を塞いで歌うのは良いのか悪いのか?

今回のまとめ
・片耳を塞いで歌うのは軽度の音痴の改善に良い
・自分の声が良く聞こえると、声を張り上げなくなる
・デメリットは、楽器の音が聞こえにくくなる。自分の声が周りにどう聞こえているか分からなくなる
・理想は耳を塞がなくても、自分の声をよく拾うこと


自分の声があまり聞こえないとき、片耳を塞いで骨伝導の音を聞く。という方法があります
これは賛否両論あるのですが、場合によってありだと思ってます
両耳塞ぐと楽器の音が聞こえなくなるのでダメです。あと鼓膜に負担がかかるらしいです

片耳を塞ぐのは、軽度の音痴の改善に良い場合があります
音痴にも様々なタイプと段階があるのですが、たいていの人は「自分の声を聞きながら歌う」ことに慣れていません
片耳を塞ぐと自分の声がよく聞こえるので、音を取りやすくなります
実際、音痴の人がこの方法で改善されました

人によっては、「骨伝導の音を聞きながら歌うと、音程が下がる」という人がいるんですが、私がチューナーで実験した結果では、片耳を塞いでも音程は変わりませんでした
歌を録音して聞いてみても違和感はありませんでしたが、これは個人差があるかもしれません
周りの楽器の音が篭って聞こえてしまうと、その音に合わせて声の音程が下がる可能性はあります

次の利点は「声を張り上げて歌うクセが解消される」です
自分の声が聞こえないと、ボリュームが足りない気がして、どんどん大声を出してしまいます
骨導音で自分の声がしっかり聞こえれば、無理に大声を出す必要もありません

ただしデメリットもあります
1、楽器の音が聞こえにくくなる
2、片耳塞ぐのがクセになる
3、自分の声が周りにどう聞こえているのか分からなくなる
です
特に3が一番困るかもしれません
骨伝導ではキレイに聞こえているのに、録音してみたら変な歌い方になってた。なんて事もあります

こういう場合は、耳を塞がずに、自分の声がよく聞こえる環境を作ることです
かといってカラオケのマイクボリュームを上げすぎるのはダメです
オススメの練習は、カラオケに行ったらマイクを使わず「部屋の角の壁」に向かって歌う方法です。生の声が壁に反射して聞こえやすくなります。
他にも、音が反射する物を目の前に立てる方法もあります(プラスチック製のカラオケのメニューとか良いかもしれませんが、ちゃんと消毒しましょう)
耳の裏に手をあてる方法も良いです

最終的には、どんな環境でも音程を外さず、音質をコントロールできるのが理想です