ハミングの効果について

今回はハミング(鼻歌)の効果について考えます

まとめ
ハミングは鼻腔共鳴が起きる。でも鼻腔共鳴のままで歌うのが良い訳ではない
ハミングは響くポイントを確認しやすいので、喉仏のコントロール練習に良い
ハミングの一番の効果は、アゴを動かさないで音程&喉仏を上下させる練習
空気の出口を狭くすることで、声帯振動が整う?
最終的に声帯・喉仏・アゴ・舌を全部独立してコントロールするのが理想


ボイトレに行くと「必ず」ハミング練習をやるスクールが多いですが、これで発声が改善するかどうかはケースバイケースです。人によっては逆効果にもなります

ハミングは口を閉じているので、空気は鼻からしか出ません
言葉は「ん~~」みたいな発音しかできません
「ん~~」とハミングしているとき、軟口蓋が下がって鼻腔に声が響きます
この状態で鼻をつまむと声が出なくなりますので、ハミングは純粋な鼻腔共鳴の状態です
さて、ハミングの鼻腔共鳴の状態を維持したまま口を開けて歌うと、良い声が出るのでしょうか?
以前「鼻腔共鳴の本当のところ」でも解説しましたが、過度な鼻腔共鳴は声が減衰して、変なクセがある歌い方になります
さらに、共鳴で音質は変わっても、音程(ピッチ)は変わりません

勘違いしてる人は「鼻腔共鳴させると声が良くなる、高い声も出る、だからハミング練習は良い」と言いますが、コレは間違いです
鼻腔共鳴は少しだけ起きれば良いのであって、過度な共鳴はダメです
なので、すでに過度な鼻腔共鳴(開鼻音)のクセがある人に、ハミング練習をさせると悪化する可能性があります
(開鼻音の悪いクセとは、この動画の1:45~みたいな感じです)

ハミング練習の良い点は「響くポイントを確認しやすい」ことです
口を開けて声を出すよりも、ハミングのほうが振動を感じやすいからです
「響き」とは「喉仏やアゴの位置によって、高音が響いたり、低音が響いたり変化する」ということです
ハミングしながら響くポイントを動かすことで、喉仏のコントロール練習になります
喉仏を下げれば、唇~喉にブルブルと振動を感じます(低音強調)
喉仏を上げれば、上アゴ~鼻にブルブル振動を感じます(高音強調)
ただし、「唇~鼻に振動を感じる状態」でそのまま歌っても、良い高音が出る訳ではありません
喉仏が上がっている状態は、喉が締まりぎみでキンキンした声になりがちです
なので、「高音=喉仏を上げる」ではなく「自分の理想の声質になるよう自在に喉仏を上げ下げできる」のが目標です。詳しくは→喉仏のコントロール

私が思う、ハミング練習の一番の効果は、アゴや舌をあまり動かさないで音程や喉仏を上下させるコツを掴めることだと思います
これはストローエクササイズも同じような効果があります
歌の難しい所は「歌詞を発音しながら音程を変えなければならない」という事です
日本語の場合「あ・い・う・え・お」と母音がありますが、母音のつながりによっては高音が出しにくくなる場合があります
例えば、GReeeeN:愛唄
ただ泣て~笑っ~て~過ごす君に~ 隣に立って~ れる事でぇ~
コレ普通に歌うと「い」の発音でかなり苦しくなります
歌詞を全部「にゃにゃにゃんにゃ~」みたいに、歌いやすい適当な言葉に変えると、不思議と楽になったりします
つまり、「歌詞の発音が、音程を作る声帯振動を邪魔してる」訳です
(発声のしくみを知りたい方はこちらをご覧ください)


以前の記事「詰まりやすい歌詞をスムーズにする」や「アゴをあまり開かない方がハイトーンが出やすい」でも書きましたが、アゴの開き・舌の位置によって高音の出しやすさが変わります
これは人によってスタイルが違うので何とも言えませんが、アゴは派手に動かしすぎないほうが高音がスムーズに出ると言われています(逆に思いっきり口を開けたほうが歌いやすいという人もいます)
※音の高さを決めるのは声帯振動なので、アゴや舌で音程が変化する訳ではない。アゴや舌の位置が声帯振動に影響する。という事

例えば、先ほどのGReeeeNの歌を「にゃにゃにゃん」でなら楽に歌えたとします
じゃあその「にゃにゃにゃん」の感覚(アゴの開き&喉仏の位置)で、歌詞を歌えるようにすれば良い訳です
この時にハミングの「アゴをあまり動かさないで音程を上下させる練習」が生きてきます

最終的に声帯・喉仏・アゴ・舌を全部独立して自在にコントロールできるようになるのが理想です
そうすると、自分で色々なパターンを試行錯誤できます。例えば、、、
「声帯閉じぎみ&喉仏下げ&アゴ開き」の形
「声帯開きぎみ&喉仏上げ&アゴ閉じ」の形
「声帯開きぎみ&喉仏中間&アゴ自然」の形・・・などなど

舌は発音に関係するので、「英語っぽい滑舌で歌う」もしくは「自然な日本語の発音で歌う」(英語の滑舌ほうが歌いにくい母音を処理しやすくなる)
さらに「ハキハキ歌う」「脱力して歌う」などなど

試行錯誤するうちに、「この曲にはこの形が合う」「この形のほうが高い声が出る」「この形になるとダメだ」と、自分の声の作り方が分かってきます
独立してコントロールできない人は、「アゴを大きく開かないと低音が出ない」とか「喉仏が上がると必ず声帯も締まる」みたいな不自由な状態になります

あと、これは私もよく分からないのですが、ハミングやストローエクササイズのように空気を出口を狭くして発声することで、声帯にバックプレッシャーがかかって声帯振動が整う。らしいです

一番最初の記事にも書きましたが、ボイトレは正解というものがありません
個人個人で声質が違うし、目指す場所が違うからです
なので、自分の喉を自在にコントロールする技術を身につけて、そこから自分の理想の声に近づけていく方法が良いと思います

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