【動画つき】歌に感情を込める方法

YouTubeに「歌に感情を込める方法」の動画をUPします
3回に分けてUPします。現在2回です

今回のまとめ
・声優や役者がセリフに感情を込めるのと方法は同じ
・感情によって顔の表情を変えるのも有効

・やりすぎは良くない
・歌い方にクセがある人は、まずそれを治す
・無声音を強めに出す方法もある

(無声音についての記事は→こちら

感情を込めるということは、ある意味で最も重要なことかもしれません
感情表現があるか無いかで、ただのカラオケになるか?それとも心に響くような歌になるか?の違いが出ます

感情表現というとビブラートとか思い浮かべるかもしれませんが、ちょっと違います
声優がセリフに感情を込めるのと同じ原理です

例えばアニメで「おかあさ~~~ん!」というセリフがあったとします
どんな感じでセリフを言うかは、場面によって違いますよね

お母さんが忘れ物をして呼び止めた?
お母さんに甘えたい?
お母さんが死にかけている?
お母さんに腹が立った?

などなど、状況によって言い方が変わります
喜怒哀楽を込めてセリフを言う、それを歌いながらやるだけです

こう言うと簡単なんですが、なかなか上手くできる人はいません
まずは歌わずに歌詞を朗読して、どうすれば感情表現できるか練習すると良いです
歌詞によっては平坦な内容もありますので、感情を込めやすい歌詞を選びましょう

ただし、感情を込めすぎるとウザくなってしまうので、ほどほどにしましょう
物語を語るように歌え」とよく言われます
主人公になると感情移入しすぎるんで、第三者の立場で語るってことですね

あとは、明るく歌いたいなら表情も明るく(^^)
悲しく歌いたいなら表情も悲しく(ToT)
顔の表情を変えると歌にも表情がつきやすいです


注意しなければいけないのが、歌にクセがあると感情表現が分かりにくくなります
例えばオペラや合唱みたいに「太い声」で歌うクセのある人
太い声で「せつない歌」を歌われても、心に響きません
さらに、オペラみたいに口をガバーッと開けると発音が不自然になり、自然にセリフを言うように歌えなくなります
逆のパターンで、口角を上げて歌うクセの人もいますが、何を歌っても「明るい声」になってしまいます
いくら喜怒哀楽を歌詞に込めても、クセで消されます

あとは滑舌のクセの問題です
例えば、外人が日本語を話すと
「私ぃはぁ アメェリカ じぃん でぇす」みたいになりますよね
こんなノリで日本語のバラードを歌うことです
「ん君ぃ~をぉ~抱ぁきぃしめっつぁぃ~~」みたいに
古い邦楽ロックの歌手がやってた歌い方ですね
これも感情表現が消されるし、妙にカッコつけてる感じがしますし、なにより昭和のにおいがします(笑)
アップテンポでリズムをつけたい時は、こういう歌い方もありなんですけどね)

「普通に喋るように歌う」ってのは、けっこう難しいものです
「歌はこう歌わなければいけない」みたいな固定概念がある人ほど苦手かもしれません
例えば「歌うときは口を大きく開けなければいけない」「喉仏は常に下げなければいけない」みたいなルールに拘りすぎる人です
まずはクセをとってニュートラルな状態に戻しましょう
歌い方のクセを直す方法は、こちらに色々書いてます



まぁどういう歌い方をするかは個人の自由ですけどね
カラオケは自分が気持ち良ければOKですし
ただし、ライブで人前でバラードを歌うとしたら、感情の表現がない歌を長々とやると客は飽きます
激しいロックなら勢い重視で感情なんて要りませんけど、アコギ弾き語りで平坦な歌い方だと、15分くらいで飽きちゃうと思います

【動画付】喉仏と口で音質をコントロールする

動画を追加しました

前回の記事の続きになります。今回は実践的な話です

喉仏と口の動きで音質をコントロールする話です
このブログで何度も書いてますが、音質とは音程ではありません
簡単に言えば、声が明るいか暗いかという事です

喉仏
上げると高音が強調、下げると低音が強調
上げると明瞭な声、下げると「まろやか」声
上げすぎると苦しそうに聞こえる、下げると余裕を感じる
上げすぎると喉頭蓋が閉じて喉が絞まる(ハイ・ラリンクス)
下げすぎても不自然な発声(オペラみたい)になる(ロウ・ラリンクス)

口の形
横に広げると高音が強調、縦に広げる(唇を伸ばす)と低音が強調
横に広げると明瞭な声、縦に広げる(唇を伸ばす)と「まろやか」声
大きく開けたほうがボリュームが出るが、音程によっては開けすぎると音がボヤケる場合がある
そもそも口は発音するために動かなければならないので、大きく開けたままキープすると滑舌が変になってしまう(これもオペラみたいになってしまう)
私的には喉仏のポジションのほうが重要だと思うので、口は自然な形にして、喉仏中心で音質調整します

舌の位置
舌が前に出ると明瞭な声、後ろに下がると「まろやか」声
ただし、舌が音質に与える影響は小さいですし、言葉を発音するのに一定の形をキープするのは不可能なので、あまり気にしないでOKです

あと鼻腔共鳴や軟口蓋はほぼ無視してOKです→詳しくはこちら

これらをどうコントロールするかは個人の自由です
その人の持っている元々の声質にもよるし、どういうジャンルを歌うかにもよります

私の場合は地声がハイラリぎみなので、喉仏は中間のまま動かさないようにしてます
裏声は「ハイラリぎみ&口は大きく開かない」ほうがキレイに響きます
ベルティング(地声に近い強いハイトーン)はハイラリにならないよう、喉仏をガッチリ下げるようにしてます

ところが、喉仏を動かせない人がけっこういます
特に女性に多いですが、男性にもいます
ハミングで振動の位置を上から下と変えてみる練習が良いかもしれません

ちなみにボイトレで言う「声の方向」とは、たいてい喉仏のコントロールのことを言っています
喉仏を上げると喉の響くスペースが狭くなり、口腔に主に響く
すると口腔の振動が鼻まで伝わり、声が前に飛んでる感じがする
逆に喉仏を下げると、喉に響くので、声が奥で響く感じがする

言葉ができるしくみ。詰まりやすい歌詞をスムーズにする

今回もマニアックで難しい内容です・・・

今回のまとめ
・言葉によって、声の出しやすさが変わる
・高い声が出しにくい言葉もある。例えば「い」など
・フォルマントを理解することで、喉が絞まりやすい歌詞もスムーズに歌うことができる

「発声の仕組み」でも書きましたが、声帯は「ブー」というオナラみたいな音しか出せません。詳しくは→こちら
あいうえお・かきくけこ・・・と発音できるのは喉・舌・口などの働きです

じゃあ何で「ブー」が「言葉」に変わるかと言うと、口や舌の動きで「特定の周波数」が変化するからです(音声フィルタリング)
コンピュータの「ブー」という音でも、周波数を変化させることで人間の声を合成できます。初音ミクなどのボーカロイドや、テキスト読み上げソフトに応用されます

「あいうえお」の母音がどう決まるかは、「口の開く大きさ」と「舌の位置(前後)」で決まります

ウチにある本から引用しました 言語聴覚士の音響学入門 海文堂

何やら難しい表ですね
まず「a,i,u,e,o」と書いてある文字に注目してください。これは母音です

横軸は「口の開き加減」で、右に行くほど口が大きく開いて、周波数も高くなる
縦軸は「舌の位置(前後)」で、上に行くほど舌が前に出て、周波数が高くなる

つまり、「あ」は口を大きく開く。「い」「う」は口を小さく
「お」は舌が後ろに行く。「い」「え」は舌が前に行く
ということです

追記:「お」は他の母音と比べて周波数が低いが、「お~」と声を録音して、パソコンなどで音程を上げても、「あ~」や「い~」に変わるわけではない。
母音を決めているのは音(周波数)の高さではなく、各帯域の周波数がどういう比率になっているかです

さて、歌の話をします
前にも書きましたが、共鳴で変化するのは音質であって、音程は変化しません
高い声を出すなら、共鳴ではなく声帯の「ブー」の音を高くする必要があります
しかし、高い声を出しにくい言葉があります。例えば「い」という言葉です
これは、「い」の発音をするための共鳴腔の形が、声帯振動に影響してしまうという事(らしい)です

「い」がハイトーンで苦しくなる曲。GReeeeN:愛唄
ただ泣て~笑って~過ごす君にぃ~ 隣に立って~ れる事でぇ~
原曲キーだと男性には苦しい曲です

改善方法です
口をあまり横に広げないで「い」と発音してみてください
それだけで楽になると思います
「い」という音は、舌が天井に付いてれば「い」と聞こえます
口の形は「あ」「う」「お」でも、舌が天井に付いてると「い」の音を出せるので、楽に高音を出せる形を見つけてください

あるいは、「い」を微妙に「ひぃ」とか「うぃ」と発音してみてください
例えば
れる事でぇ~」を
ひぃれる事でぇ~」とか「うぃれる事でぇ~
などと歌うと、ハイトーンを歌いやすい場合があります
で、その歌いやすい感覚を身につけたら、ちゃんと「い」に戻して歌ってください
歌いにくい母音を誤魔化すのがクセにならないよう注意です


もし歌いにくい曲に出会ったら、歌詞を全部「ララララ~」や「ママママ~」や「にゃにゃにゃ~」にして歌ってみてください
ララララ~で歌えるのに、歌詞にすると歌えないのは、「い」「う」などの詰まりやすい言葉を上手く処理できないのかもしれません

自分で作詞するときは、こういうのも考えて作りたいですね
歌詞が歌いやすい曲は爽快感があります。逆にハイトーンで歌いにくい母音が出るとストレスが溜まります・・・(ちなみにX JAPANは歌いにくい母音が多い気がします^^;)

追記記事
アゴをあまり開かない方がハイトーンが出やすい?
無声音とは何か?

筋トレはボイトレに効果あるか?腹横筋の話

筋トレはボイトレに効果があるのか?
結論を先に言うと、ほとんどありません
ボイトレやりながらジムで筋トレして、2年で12キロ筋肉を増やした私が言うんだから間違いありません(^^;)
まぁ体幹(胴体)は筋力あったほうが良いですけど、胸とか肩とかの筋肉は発声には関係しません

声帯の周りの筋肉はパワーは必要ありません。それよりも「自在に動かせるか?」「緻密な調整ができるか?」が重要です

あえて歌のために筋トレするとしたら、息を吐くための筋肉を鍛えると良いでしょう
一番は腹横筋(ふくおうきん)、あと腹筋、腹斜筋です
※腹式呼吸の記事でも解説しましたが、パワーで大量の息を吐く訳ではありません。一定の量を安定して吐くための筋肉です。腹式呼吸の詳しくは→こちら

腹横筋はインナーマッスルで、腹筋の内側にあります
腹筋は身体の正面だけですが、腹横筋は腹から背中までグルッと1周してます

ボイトレで「背中を意識する」ってのは、この腹横筋のことです
「歌うには背中の筋肉が大事」とか言われますが、背骨に付着する脊柱起立筋や、肩甲骨の間の菱形筋なんかは、たいして歌に関係ありません
やたらと背中を意識して筋肉に力を入れる人もいますが、無駄に疲れて自然な声が出なくなります。詳しくは→歌うときの姿勢について

腹横筋の構造を頭に入れて、よけいな部分に力を入れないようにします
歌うときは、息を吐きながら少しずつウエスト全体が絞られるような感じです
正面だけじゃなく、側面~腰あたりまで絞る感じです
くれぐれも無駄に力を入れる必要はありません。必要最低限で絞れば十分です

身体の正面の「腹筋」にやたら力を入れて、ボディブローに耐えるような状態で歌うのは間違いです
それは息を吐くのに関係ない力の入れ方だからです
ボディブローに耐えてる時って、力をグッと入れて外側を固くしてるだけで、内部は絞られてません。なので腹圧はあまり変化しません
正しくは、腹を軽く凹ませて、ウエスト全体を細く絞って、腹圧を上げるのです

腹筋よりも腹横筋が大事なんですが、そこまでガチガチに鍛える必要はないです
リップロールが安定して出来るくらいの「吐く力」があれば十分です

ただし・・・デスボイス(仮声帯発声)をやるとしたら、初心者のうちは息を吐くパワーが必要になるかもしれません(慣れるとデスボイスもパワー不要になる)
まぁ普通の人はハードコアやデスメタルなんて歌う機会は無いと思うので、筋トレは頑張り過ぎなくて良いと思われます

腹式呼吸について掘り下げてみる。なぜ歌うと疲れるのか?

今回の記事は少しマニアックな内容です
腹式呼吸について詳しく書きますが、普通に歌える人なら、そんなに腹式呼吸のやり方にこだわる必要はないです。マニアだけ読んでください

さて、この腹式呼吸のやり方。これは人によって様々です
「あなたの腹式呼吸は間違っている!」みたいな動画がたくさんあります(笑)
中には「腹式呼吸なんか必要ない!」という方もいます

結論から言うと、腹式呼吸は必要です
大げさに腹を膨らませたり、凹ます必要はありませんが、厳密に言うと人間は腹式呼吸しないとほとんど歌えません

まぁ「腹式呼吸」の定義が人によって曖昧です。特にボイトレ界と医療界では言葉の認識にズレがあります。医学的には横隔膜を使っていれば腹式呼吸に分類されます
横隔膜を動かさないで純粋な胸式で歌うのは、普段の呼吸と違う事をやる訳ですから不自然な方法です。普段の呼吸と同じように歌うのが自然なわけです
(ちなみに横隔膜を動かす横隔神経が損傷すると呼吸困難になる)

注意しなきゃいけないのが、ヨガや太極拳でスーハースーハーと腹式呼吸やっているときと、歌っているときでは状況が違うということです

普段の呼吸時は、声帯が完全に開いているので、何の抵抗もなく息を吐けます
歌っているときは声帯が半分閉じているので、それが抵抗になって息がなかなか吐けません

「ふぅ~~」と深いため息をついてください。何の抵抗もなく肺の空気が全部出ますよね
今度は「あ~~」と地声を出しながら肺の空気を出し切ってください(ファルセットじゃダメですよ、あくまで地声を出しながら)
発声しながら息を吐くと、全部出すのに時間がかかるし、ちょっと大変ですよね
(この動画の2:20~見ていただくと、よく分かると思います→ https://youtu.be/ClF_7bbHmUI?t=140

呼吸は声帯の抵抗がないので、吐く力は要らない
歌は声帯の抵抗があるので、吐く力が要る ということです

ここで解剖生理学の話をします

細かい説明をするとキリがないので簡潔に説明します
息を吸うときは横隔膜が収縮して下に下がり、肺が広がります(他の筋肉も働くのですが、ほとんどは横隔膜の力です)
息を吐くときは横隔膜が弛緩(脱力)し、横隔膜と伸びた肺が「ボヨン」と元の位置に戻ることで息が出ます。 伸びたゴムが「ボヨン」と元に戻るイメージです
つまり、通常の呼吸時は息を吐くのに力は必要ない。ということです
横隔膜に力が入るのは吸うときで、吐くときは脱力するのです
深~く息を吸い込んで、フウッと深いため息をつくと分かると思います
息を吐くときに力は要りません

ところが、歌ってるときは声帯が抵抗になるので、肺と横隔膜がボヨンと戻るだけでは息がなかなか出ないのです
なので、歌ってるときは息を吐くために腹横筋や内肋間筋が働くのです
この筋肉の助けがないと、しっかりした声は出せません。これが歌に腹式呼吸が必要な理由です

「腹式呼吸は必要ない」と言ってる方がいますが、先に書いたように横隔膜を使う呼吸は腹式呼吸です
横隔膜を使わない純粋な胸式呼吸だと、安静時の呼吸だけでも苦しいと思います
こういう方々はたぶん「過度に腹に力を入れる必要はない」「息が強すぎるのはダメ」と言いたいんだと思うんです(←この意見には私も賛成)
しかし、「腹式呼吸は必要ない」というタイトルのせいで誤解を与え、それを見た人間が浅い知識で「腹式呼吸は必要ないんだぜ~」と解釈します
「大げさに腹式呼吸をしろ」と言う人は間違いですが、「腹式呼吸は必要ない」と言う人も間違いです
腹式呼吸は強い息を吐くためではなく、一定の息をコントロールして出すために行います「腹式=強い息」ではありません

話は変わりますが、歌ってて息苦しくなる人は「息を吐かない」ことが原因の場合があります
声帯閉鎖が極端に強い人や、恥ずかしがってボソボソ歌う人は、息を吐かないから苦しくなります。なぜなら息を吐かなきゃ、新しい空気を吸えませんので
水泳も同じですが、水中で息を止めてたら、息継ぎのときに吸えません
「息を吸う → 水中で少しずつ息を吐く → 顔を上げて吸う」のサイクルなら苦しくありません
歌の場合、肺の空気を全部出し切る必要はないですが、フレーズごとにある程度の息を吐いたほうが楽になります
ちゃんと息を吐けば、肺の中が陰圧になるので、無理に吸おうとしなくても自然に空気が入ってきます (吐きすぎも良くないので、あくまで適量の息を吐くこと)

息を吸うときも、無理にたくさん吸ってはダメです
肺の空気を100%換気するわけじゃないので、吐いたぶんを入れれば十分です
ヨガや太極拳みたいにゆっくり吸う時間はありませんので、吸気時に横隔膜やら背中を大げさに意識する必要はありません

長くなりましたが結論を言うと、
歌に腹式呼吸は必要だが、ヨガみたいに大げさに腹を動かす必要はない
意識すべきは「吸う」よりも「吐く」

たくさん吐けば良いという訳ではない。一定の量の息を安定して吐く

呼吸の記事を追加しました
腹横筋について→筋トレはボイトレに効果あるか?
口呼吸について→鼻から吸うか・口から吸うか