二井原実 × 稲葉浩志 ボーカリスト対談を見た感想

3年くらい前の動画ですが、ラウドネスのボーカル二井原さんと、B’zの稲葉さんの対談の動画です。マサ伊藤が司会してます
ボーカリストとして興味深い話を聞けます

以前の日記にも書きましたが、私はボーカルを研究するときに、「歌ってる声」と「普段の声」を比較します。そうすると発声方法が推測できるからです
あくまで想像ですが・・・

二井原さんは話し声がすでにハスキーボイス
声帯から空気が漏れて仮声帯も振動してる感じがする。声帯の健康的には悪そう
ちょっとハイトーン出しただけでシャウトになるはず
高音は出やすいが、声帯の表面が荒れるとコンディションが変わりそう
喉が太い(後で解説しますが、今は喉仏を下げる意識で歌ってるらしい)
太い喉で、喉仏下げて、枯れた声帯でシャウトしたら、そりゃ外人メタルバンドみたいな声出るわ・・・

稲葉さんも喉が太いし長い。喉仏がデカくて下の位置にある
二井原さんみたいに枯れてない。健康な感じ
声帯がしっかり振動してるので、地声成分が多い
地声は喉によく声が響いていて、声質は低い
で、歌うときは喉仏を上げて歌うんだと思う
普通の人が稲葉さんみたいに歌うと、喉が絞まったハイラリボイスになってしまう
喉仏の位置が低い人なら、ハイラリにしても良い感じになるんだと思う
地声の振動が強いから、ミックスボイスも強く出やすい
激しい曲もバラードも裏声使わず地声一本で歌うのは「男っぽさ」を売りにしてるのかなぁ・・・

・・・たぶんね(´・ω・`)
(ちなみに伊藤政則も喋りのプロだから良い声してる)

この2人の歌い方は普通の人には参考になりません
特殊な喉を持った人間が、特殊な歌い方をやってます。悪く言えばクセの塊
同じようなタイプの人は参考になるでしょうけど、普通の人はマネしないほうが無難

ちなみに私の声は、稲葉さんみたいに地声成分が強いですが、喉が細く、喉仏の位置が高く、地声も高くて軽いです
喉にあまり響かず口腔で響くので、厚みがない声です
だから、稲葉さんとは逆に喉仏を下げるようにして歌って、さらに地声成分が出すぎないように裏声を混ぜるようにしてます
プロの歌い方を真似るんじゃなくて、自分の喉に合った使い方を心がけてます


動画ではいろいろと面白い話をしてるんですが、私がビックリしたのは「2人ともデビュー当時は我流で歌ってて、ボイトレ知識も少なかった」ということ

二井原さんは、「暴飲暴食&過酷なツアーで28歳くらいで声が出なくなって、30代半ばで生まれて初めてボイトレやって、声が改善した
稲葉さんは、「昔はウォームアップ方法を知らなくて、ライブ前に無理に叫んで自滅してた(21:10~)
。。。おいおい(^^;)

14:50~2人ともイヤモニあると良いと言ってますね
モニタースピーカーの音量がデカすぎると耳が遠くなる。耳が遠くなると自分の声が聞こえなくなる。するとガナる(無理に叫ぶ)。すると声が出なくなって、さらに自分の声が聞こえない。の悪循環
イヤモニなら、そういう事はないそうです
このブログでも、ライブやスタジオで歌って疲れる人のために記事を書いてます→こちら

18:00~「リップロールは大事」という話をしてます
私も大事だと思います。以前に書いたリップロールの記事は→こちら

29:00~二井原さん「年齢を重ねるとボーカルは声が衰えてくる。その状態に合った曲をやるべき。と医者に言われた
稲葉さんも若い頃とは歌の感覚が変わってきてるそうです。あれ?と思うことが時々あるらしい
私が思うに、稲葉さんは若い頃よりも地声(普段の話す声)が低くなってる気がする・・・でも若い頃の軽い声よりも、今のほうが良い
最高音は衰えるかもしれないけど、低音~ほどほどの高音までは、昔より厚みが出て良いんじゃないか?と私的に思ってます

41:30~デスボイスについては2人とも経験はないようで、「喉を痛めないで、あんな声が出せるのは不思議」みたいな事を言ってます
デスボはコツさえ掴めば声帯に負担はかけませんし、パワーも不要になります。詳しくは→こちら

58:20~稲葉さんが「日本語でハイトーンを歌おうとすると母音が歌いにくいので苦労する」と言ってます
私もそう思います。母音についての記事は→こちらこちら
以前にも書きましたが、稲葉さんは日本語の発音を英語っぽくして歌ってます。そのほうが、歌いにくい母音を誤魔化せるので高音は歌いやすくなります

特に興味を引いた内容が51:00~55:00の二井原さんの話です
アメリカのレコーディングで英語の発音で苦労した。外人は英語の発音で喉に響かせる。これが日本人にはできない。俺もここ5年くらいで分かってきて、喉の奥(重心の低い位置)で響かせるようにしている。俺はゲロボイスって呼んでる
的な内容です
たぶんコレって「喉仏を下げる」って意味だと思うんですが、二井原さんが言ってる「ゲロボイス」ってもっと深い技術がありそう。舌の使い方や、喉~口の共鳴腔の使い方とか
二井原さんが54:00~実例でやってくれてるんだけど、確かに外人みたいな声が出てる
でも二井原さんの喉が特殊(声帯がハスキーで太い喉)だから、ちょっと参考にならない部分もある


外人は何であんな声が出るんだろう?といつも不思議に思ってます
喉の太さや、声帯の厚みなどの肉体の違いもありますが、発音技術の違いも大きいと思われます

日本人と外人では、母音や子音の数が違うんですよね
日本語の母音は「アイウエオ」だけですが、英語の場合は「ア」の発音だけでも5種類くらいあって、「アとエの中間」みたいな発音もあります
つまり外人は「多彩な喉&舌の使い方ができる」ということです
もちろんコレは歌にも生きてきます

これはいつか詳しく書いてみたいのですが、私自信が英語を話せないんで、書いたとしても、パクリ記事しか書けないんですよね
自分がまず習得しないと、自分の言葉で説明できないので、ちゃんと練習してから書こうと思います

ハスキーボイスの出し方。非整数次倍音(ノイズ)がある声

非整数次倍音の話の続きです
第1回「倍音には整数次倍音と非整数次倍音(ノイズ混じりの声)がある」
第2回「非整数次倍音を持ってる歌手って誰?」

今回は第3回、声に非整数次倍音を入れる方法です
これは歌の技術と言うよりも、モノマネの技術になってきます
ハスキーボイスのモノマネです

ハスキーボイスも色々ありまして
1、普段に話している声がかなり枯れてる人
(スティーブン・タイラー、森伸一、ビートたけし、桐谷健太など)


2、普段の声がややハスキーボイスで、歌うと部分部分でハスキーが強調される人
(ワンオクTaka、宇多田ヒカル、徳永英明、GLAYのTERUなど)


3、普段の声が普通で、歌うときにファルセットを使ってややハスキー気味になってる人
(平井堅?)

4、本来ハスキーとは呼ばないのだが、過度な声帯閉鎖や鼻腔共鳴、ハイラリでノイズが出てるパターン
(追記:舌の位置を「い」にすることで少しノイズが出るが、まぁ使うことはないと思う)


1と2の人は枯れている声帯を持っている人です。
声帯が上手く閉じずに、少し息漏れを起こしている状態です(声帯の健康的には悪い)
あまりにもハスキーがひどくなると天龍源一郎みたいになります
3は普通の声帯を持っているが、歌い方でややハスキーになっている
4はハスキーとは違うノイズで、どっちかと言うと耳障りなノイズになります

エッジボイスの話でも書きましたが、声にエッジ(ノイズ)を加えるには何種類か方法があります
大きく分けると「声帯」「仮声帯」「共鳴」です
ハスキーボイスは「声帯」で作ります(仮声帯も少し関係する)

「共鳴」でノイズを出すと言う人もいるのですが、共鳴でノイズを作るとしたら「4」にも書いたとおり過度な鼻腔共鳴やハイラリしかないと思うので、地声のままだとキンキンした耳障りな音になるはずです
あくまで声帯と仮声帯で「基礎のハスキー音」を作って、そこにハイラリなどで共鳴を付加させる方法になると思います

普通の人がハスキー声を出すなら、声帯を「地声とファルセットの中間」にする必要があります
つまり「息漏れを起こしている状態」を意図的に作るのです
ファルセットになりすぎると声自体が出なくなるので注意しましょう
その人がどんな地声を持ってるか?で変わってくるんですが、感覚的には「地声から少しファルセットにした状態」が良いと思います

で、ハスキーのザラザラした成分は、ハイラリにすると強調されます
地声のままハイラリにすると変な声になりますが、ハスキーでハイラリにすると良い感じになる場合があります
ハイラリとは喉仏を上げた状態で、アゴを前に出すとハイラリになりやすいです

声帯をハスキー状態で維持するには、声帯のコントロールと喉仏のコントロールが重要になってきます
やり方については下記の記事を参考ください
ものマネでミックスボイスの練習
声帯閉鎖のコントロール
喉仏と口で音質をコントロールする

ハスキー声は地声と比べてパワー感やボリュームが下がりますが、それはしょうがないです
ただ、マイクで音を増幅させると、ハスキー声のほうが「迫力」を感じることがあります
なぜなら「声を枯らして叫んでいる感」があるからです
普通の地声のほうがボリュームは上がるのですが、ハスキー声は感情に訴えかける要素が強いんです
エアロスミスのスティーブン・タイラーなんかも、決して「ボリュームのデカい声」を出してる訳じゃありません
どちらかと言うと彼はハスキーで繊細な声ですが、シャウトすると「すげぇ!」と感じますよね
これはボリュームがスゴイんじゃなくて、「叫んでる感」がスゴイんです


以上。今回はファルセットとハイラリでハスキーボイスを作る話でしたが、仮声帯を積極的に振動させて、それに地声を混ぜる方法もあります
ハスキーボイスよりさらにノイズを増加させたデスボイス的な発声で、一般的には使われませんけど
これは仮声帯発声の記事で詳しく書いてます

非整数次倍音の歌手は誰?

前回の話の続きです
倍音には整数次倍音と非整数次倍音(ノイズ混じりの声)がある。と前回に書きました

整数次倍音:力強い、頼りがいがある、ハッキリした声
非整数次倍音:味がある、親しみやすい、ハスキーボイス

ザックリ書くとこんな感じです
非整数倍音は耳障りなノイズを出してる声もあるので、全部が良いとは言えません

前回も書きましたが、B’zやTMレボリューションなんかは力強い整数倍音です
っていうか、だいたい整数倍音の歌手が多いと思います
ちなみに私の声も整数倍音が強いパワー系なので、逆に「味のある声」に憧れます

ノイズ混じりのハスキーボイスの代表と言えばスティーブン・タイラー。ラウドネスの二井原実とか
演歌だと森伸一。その息子のTAKAは整数のパワーもそこそこあって、さらにハスキー要素もあるオイシイ声
私の好きなスティーブ・ペリーも「整数のパワー&ハスキー要素」をミックスした声です
非整数の歌手は他にもブルース・スプリングスティーン、ブライアン・アダムス、リッチー・コッツェン、デヴィッド・ギルモア、ケニー・ロギンスとか・・・全部私の趣味ですが、みな味のある良い声をしてます(かと言って、ノイズが混じりすぎると天龍源一郎みたいになって、普通の歌に使えない声になってしまいます)

クラシックやオペラだと、ハスキーな声は悪い声に分類されますが、ロックやR&Bにはマッチします

この人たちは何でノイズ混じりの良い声を出すのでしょうか?
簡単な話です。元々そういう声だからです
以前も話しましたが、スティーブン・タイラーもTAKAも、普段のインタビューから「あの声」なんですよね
声帯閉鎖が弱いのか?声帯表面の状態が悪いのか?ノイズが混じるってのは声帯の健康的には悪い場合が多いです

「声帯から上の共鳴でノイズを作るんだ」って言う人もいますが、だぶん共鳴だと良いノイズは乗らないと思うんですよね・・・私の経験上ですが
声帯と仮声帯の使い方がポイントになると思います

次回は「ノイズを声に乗せる方法」です

整数次倍音・非整数次倍音での声質の変化

さて、今日は「倍音」と「声質」についての話です
以前スペクトラム・アナライザーエンハンサーの記事で、「倍音(ばいおん)」の話をしました

倍音というのは、元の基音に重なるようにして、その音より高い周波数の音が出ることです
例えばA3の音程を「あ~~」と出したとき
2倍の周波数の2倍音(1オクターブ上のA4)
3倍音(A4の上のE5)
4倍音(さらにその上のA5)
さらに5倍音6倍音・・・と次々と重なって音が出ることです
整数の倍音が出てるので「整数次倍音」と言います

こんな話をすると「すげぇ!どうやったら倍音を出せるんですか?」と言う人もいますが、普通に声を出すだけで倍音は出ます
人間の声は元々倍音が含まれいます
倍音がない音は「プー」とか「ピー」という電子音になります

裏声よりも地声のほうが倍音は多く出ます
以下の画像は330Hzの音を地声と裏声で出した波形です
普通に「あ~~」と声を出しただけです

どちらの波形も330が基本になって、その倍の660、990、1320、1650と倍音の山が出てますが、裏声は倍音の山が小さくなってますね
これが地声と裏声の声の厚みの差です

さて、次の波形を見てください
同じ330Hzの地声ですが、喉仏を極端に下げて声を出してます

同じ地声なのに、4つ目の山から極端に小さくなってますね
これは喉仏を極端に下げて、共鳴を低音重視にしたため、高域が削られたのです
(音程は330Hzのままで、音質だけが変わる)
330Hz~1KHz(1000Hz)までの周波数はよく出てますが、1K以降の音が弱くなってます(ちなみにパワーあるハイトーンを出すなら1K~4Kの帯域が超重要)

喉仏の上げ&下げ、どっちが悪いという事ではなくて、曲によって音質を使い分けようという事です
合唱を歌うときや、まろやかにバラードを歌いたいなら喉仏を下げ
明るい曲でハイトーン効かせたいなら、喉仏を普通の位置、もしくは少し上げたポジションにすると良いです(喉仏のコントロールは→こちら
ちなみに、ハイトーンを出すために極端に喉仏を上げるのは良くないです
中音が抜けたスカスカの声になって、ショボいハイトーンになります

で、その人の喉の太さや長さによって、どの周波数がよく響くかが変わってきます
太くて長い人は低域が響くし、細くて短い人は高域です
あとは、声帯の振動(声帯閉鎖)が地声寄りなら倍音が多くなり、裏声寄りなら倍音は少なくなる
ただし、必ずしも「倍音を多く出す=良い声」になる訳ではありませんし、「高域が強く出る喉=良い声」ではないので注意が必要です

さて、ここまでが整数次倍音の話で、次が非整数次倍音の話です
非整数次倍音とは、上記の写真のようにキレイに整数倍で山が出る事ではなく、細かいギザギザの山が出ることです
「倍音」よりも「ノイズ」と言ったほうが分かりやすいです
いわゆるハスキーボイスや、ガラガラ&ザラザラした声の人が、これに該当します

ノイズを最高に出す歌い方は仮声帯発声(デスボイス)です
(デスボイスの出し方は、こちらに詳しく書いてます)
普通の地声とデスボイスの波形の違いを見てみましょう

地声はちゃんと整数倍の山が200、400、600、800・・・とキレイに出てます
デスボイスの波形は、なんとなく山は分かりますが、整数の山の間に「ギザギザの山」が出てますよね
これが非整数次倍音と言われてるのですが、簡単に言えばノイズです
デスボイスは音程をつけるのが難しいです。なぜなら音の山が潰れて、何の音か判別しにくくなるからです

これだけノイズが出ると、普通の歌には使えない「悪い声」になるのですが、少量のノイズならカッコイイ声になるんです
私の好きなスティーブ・ペリーやワンオクのTakaなんかは、整数の倍音を出しつつ、ハスキーなノイズも少し混じっています
逆に、B’zの稲葉なんかは整数倍の倍音が強く、ノイズが無くパワフルな感じ
Takaはパワーはほどほどで、ノイズが少し混じった「味」がある感じ
歌手によって個性があるんですね

ちなみに私の声は、地声に近い声でハイトーンを出すので整数倍の倍音が強く、ハスキー要素も無いのでノイズが少ないです
なので、B’zの曲を歌うとハマるのですが、ワンオクをそのまま歌うとダメです
ワンオクは地声パワーを弱め、ノイズ混じりで歌う必要があるんですが・・・難しいのなんの(><)研究中です

話が長くなったので、次回に「非整数次倍音の歌手」や「ノイズを混ぜて歌う方法」について書きます

【動画付】正しいデスボイスの出し方。仮声帯発声。擬似ハスキーボイス

今回のまとめ
・仮声帯発声はファルセットなみに息を吐く(ベルヌーイ効果を使う)
・声帯は開いたまま仮声帯を締める
・喉仏を下げたほうが仮声帯が鳴りやすい
・「声帯が痛い」と感じたら、その方法は間違っている

・ボーカルフライで振動させる感覚とは違う


今回はデスメタルなどの歌唱で使うデスボイスの出し方を解説します
これは文章では説明しにくいので、↑の動画を参考にしてください

デスボイスと言ってもグロウルとかガテラルとかフォールスコードスクリームとかいろいろ種類があります
声帯を締めて出すボイスもあれば、弛めて出すボイスもあります

今回はその中でも「仮声帯」を使う発声を解説します
下水道ボイス」とか言われます
(私はデスボイスの正確な名称は分かりません。分類は他の方にお任せします)

まずは声帯の断面を見てください

ウチにある本から画像を借りました 解剖生理をおもしろく学ぶ サイオ出版

声帯ヒダ」が通常の発声で使う声帯です
その上にある「前庭ヒダ」がいわゆる「仮声帯」です
この仮声帯を振動させて音を出します
この下に肺があるので、息は下から上に流れます

何が難しいかと言うと、仮声帯を鳴らすには、喉を締めて仮声帯を寄せて、そこに空気を当てる必要があります
声帯が開いてないと、仮声帯を振動させる量の空気が流れません
つまり「声帯は開いたまま仮声帯だけを締める」必要があります

まぁ仮声帯を締めると言っても、完全に閉じるわけではありません
正確に言うと「寄る」です。寄って振動するんです
そんな器用なこと出来るのか?と思いますよね

実は、Youtube等でデスボイスを出してる方でも、これが出来ている人は少ないです
仮声帯発声と言いながら、声帯で「ぎゃぁぁ!」と歪みを出してる方が多いです
(声帯で歪ませるデスボイスもあるが、それは仮声帯発声とは呼ばない)

声帯で歪ませると声帯を痛めます、仮声帯メインで歪ませれば負担は軽いです
それに、声帯で歪ませると「ただの苦しそうな人間の声」になって、耳障りな高音がキンキン出るだけでカッコ良くありません
仮声帯中心に振動させると「人間じゃない声」になって、耳障りじゃない歪みになります
ギャギャーうるさい声を出すことがデスボイスではありません。本当に上手い人は心地良い歪みを作り出します(ギターの安いディストーションと、高級真空管アンプの違いみたいな感じ 笑)

さて、仮声帯を振動させるには、仮声帯を喉の筋肉で寄せて、そこに大量の息を流す必要があります
ベルヌーイ効果というものがあって、勢いよく息を吐くと、その周辺の圧力が低くなって、周りのものを吸い寄せます
シャワーを浴びていて、水にカーテンが吸い寄せられる現象です
(詳しく知りたい方は動画を検索してみてください)

喉の筋肉の力で仮声帯を寄せて、さらに呼気のベルヌーイ力(りょく)でも寄せる
W効果です。すると仮声帯が振動します

息をたくさん吐く必要があるので、声帯が地声の状態ではダメです
上記の動画を2つ見ていただければ分かりますが、地声の状態では声帯閉鎖が強く、声帯が空気抵抗になるので、息を多く吐くことができません
仮声帯を鳴らすにはファルセットなみに息を吐きます

なので、よく言われる「ボーカルフライで仮声帯を振動させる」の感覚とは違います
ボーカルフライは、声帯閉鎖を地声よりさらに強くして、息が吐けない状態になってます
これは「声帯も振動させながら仮声帯も振動させる」的なアプローチで、喉ベースのような音を出すときの方法です

さて、その練習方法ですが、これは文章では表現しづらいです。
以下の文章と、冒頭の動画を参考にしてください
※痛みを感じたら中止してください

目標は「声帯を開いて、仮声帯を締める」ですが、いきなりコレは難しいので、まずは「声帯も仮声帯も両方締める」から練習します

喉仏を下げます。おもいっきり下げます
(喉仏が動きにくい方は、まずそこから練習しましょう)
喉仏を下げながら口を縦に開きます。おもいっきり開きます
ムンクの「叫び」みたいな顔になりましたか?

その顔のまま、胸の前で両手を合わせて、息を止めてギュ~~ッと押し付けましょう
全力で硬い物を押しつぶす感じです
そのときに、息が漏れると「ウッウッウッ・・・」みたいな「しゃっくり」みたいな音が、ほんの少し出ませんか?
これが仮声帯振動の元です
で、今度は「ウッウッウッ・・・」じゃなくて「オッオッオッ」と言ってみましょう

このときに喉の奥で「キュッ」と締まっている感覚があると思います
感覚的には、「アゴのすぐ下」あたりを締める感じです
その部分を締めたまま、声帯を開いて息を吐きます

感覚が分かってきたら「オ~~~」と伸ばします
声帯は閉鎖をどんどん弱めて、息の量をファルセット並みに吐きます
(動画1のビニール袋に息を吐いてる部分を参考にしてください)

この練習の良いところは、「声を出さなくても仮声帯を寄せる感覚が掴める」ことです。いきなり声を出しながら仮声帯の寄せ方を探ると、その過程で喉を痛める可能性があります。
この練習は、最初の段階でまず仮声帯を寄せる感覚を掴んで、取得したら声を出すようにしています

練習は出しやすい音程でやってください。低音のほうが出しやすいと思います

純粋に仮声帯だけが振動すると、声帯は振動しません
喉仏を触って、地声と同じような振動をブルブル感じたら、仮声帯じゃなくて声帯振動になってます
まぁ慣れないうちは声帯振動も混じってくると思います
実際に歌うときは、仮声帯と声帯の音を混ぜて出したり、純粋に仮声帯だけの音を出したりと、色々と使い分けます

喉仏は下げたほうがやりすいと思いますが、慣れると喉仏を上げても出来るようになります
あとは舌や口の形を変えたりして、いろんなバリエーションを生み出します(動画2)

これが出来ると、ハスキーボイスみたいな声も出せます
ただし、あくまで擬似ハスキーなんで、本物の洋楽アーティストみたいに歌うには素質と練習が必要です

最初はかなり息を吐く力を必要とします。腹横筋のパワーが必要です
しかし慣れてくると、そんなに息を吐かなくても出せるようになります
ベルヌーイ効果に頼らず、筋肉で仮声帯を寄せるコツが分かってくるのです
そうなると、かなり楽にデスボイスが出せますし、息を節約できるのでデスボイスでロングトーンも出せるようになります

仮声帯発声のコツは、「ゲロを吐くように」とか「咳こむように」とか言われますが、「ゲホッ!ゲホッ!」みたいに声帯に力を入れてやってしまうと、かなりの負担がかかります
「声帯が痛い」と感じたら、その方法は間違っています
あと、他人の方法が自分に合うとも限らないので、この文章もあくまで参考にしてください

声帯閉鎖についての知識をつけると、デスボも理解しやすいです→こちら
5/11追記:非整数次倍音(ノイズ)の話を追加しました→こちら
デスボイスの声帯を撮影した動画を追加しました。Uの字になってる骨みたいなやつは喉頭蓋。その奥に仮声帯、さらに奥に声帯があります。
デスボイスの時は仮声帯が寄って振動しています
普通に声を出しているときは仮声帯が離れて、奥の声帯まで見えます