柔らかく歌う方法。RADWIMPS、BUMP OF CHICKENなど

以前に「歌にダイナミクス(強弱)をつける」でも書きましたが、ファルセットで「ささやくように柔らかく歌う」「小さく歌う」テクニックについて解説します

これは「歌声が小さくて聞こえない人」とは違います
上級者の歌は、ささやくように歌ってるのに、しっかり声は聞こえます(マイクの性能差もあるが、発声技術の差が大きい)

このブログで何度も書いてますが、呼吸・声帯・喉仏・口・舌を使い、音質をいろいろとコントロールすることで、こういう声を出せるようになります

まず呼吸と声帯はセットで考えちゃいましょう
声帯閉鎖が強いと地声になりボリュームアップ。息は漏れないので呼気は少ない
声帯閉鎖が弱いと裏声やファルセットになりボリュームダウン。息が漏れるので呼気が多い
(声帯閉鎖についての詳しい記事はこちら

図書館でヒソヒソ話をしてる声がファルセットです
でもこの声で歌ったら、全く聞こえないですよね
地声とファルセットはスイッチのようにON/OFFで切り替わるのではなく、間にいくつもの段階があります
完全なファルセットにするのではなく、地声から少しファルセットにするぐらいのポジションなら、ささやく声でボリュームがそれなりに出せます

地声よりもファルセットは息の出が多くなるので、一定のペースでしっかり息を吐く意識が大事です
「ボリューム小さいから、息は少なくていい」という考えは間違いです
しっかり腹式呼吸を意識しましょう

どうしても地声になってしまってファルセットが出来ない人は、歌詞を全部「ホホホホ~」で歌ってみましょう
ファルセットになりやすい音です
「ヒヒヒヒ~」や「フフフフ~」でも良いのですが、喉仏が過剰に上がって喉が絞まらないよう注意です
「ホホホホ~」なら喉仏は過剰に上がらないと思います


次は声帯の上にある喉仏と口のコントロールです
喉仏を上げると高音が強調、下げると低音が強調
喉仏を上げると明瞭な声、下げると「まろやか」声

口腔を横に広げると高音が強調、縦に広げると低音が強調
口腔を横に広げると明瞭な声、縦に広げると「まろやか」声
(喉仏と口についての詳しい記事はこちら

ついでにの話もします
舌が前に出ると明瞭な声、後ろに下がると「まろやか」声
ただし、舌が音質に与える影響は小さいですし、言葉を発音するのに一定の形をキープするのは不可能なので、あまり気にしないでOK
(発音と舌についての詳しい記事はこちら

特に重要なのが喉仏です。
クラシックや合唱の人なんかは、周りになじむ「柔らかい声」を出しますよね
喉仏を下げて、口を縦に広げて歌ってるので、中低音がよく響きます
ただし、声帯は強く振動してるので、柔らかいけどボリュームのある声です
雄大・壮大なイメージですね

しかし、ささやくようなファルセット(声帯振動が弱い状態)で、クラシックみたいな口の形をすると、上手く声が響きません
それに、「クールでせつない感じ」を出したい場面で「壮大な響き」を出してしまうと、雰囲気が壊れます
ファルセットの場合は、喉仏を少し上げるか、もしくは通常の位置にして、口は大きく開きすぎない方が、しっかりと音が出ると思います
(これは個人差があって、その人の喉の太さや長さで変わってくる)
要は、低域よりも高域を響かせたほうが、ファルセットは声が通る。ということです
(あくまでファルセットの場合です。地声の状態で喉仏を上げて高域を響かせると、キンキンしたウルサイ声になりがちです)

あとは、滑舌のコントロールです
ハキハキ歌うとボリュームが大きく感じます
ボソボソ歌うとボリュームが抑えて(落ち着いて)感じます
「ボソボソ歌う」と言うと悪く聞こえますが、これは「日常会話で普通に使うくらいの口の開き」という事です
小学生の朗読とか、やたら口を動かしてハキハキ発音しますよね。「真っ赤な!真っ赤な!太陽でした!」みたいに
プロの朗読は、自然な滑舌で、丁寧に感情を入れて読み上げます(歌に感情を込める方法は→こちら

素人がボソボソ歌うのと、上級者がボソボソ歌うのは違います
上級者は、、、
声帯を地声~ファルセットの中間にして「柔らかいけど少しはボリュームを出せる声」を使う
一定の息を安定して吐くので、音も安定する
その声が一番よく響くように喉仏をコントロールする
この「呼吸~声帯~喉仏」の土台が出来た上で、口を大げさに動かさず、自然な滑舌で歌う
という事をやってます

初心者は、、、
ボリュームを落とすと、蚊の鳴くような地声や、スカスカのファルセットしかできない(微妙な声帯コントロールができない)
息を安定して吐いてない
喉仏がコントロールできない。無駄に力が入って喉が絞まってる場合もあり
土台が出来てない中で、口をあまり動かさずボソボソ歌う
てな感じです

さて、タイトルにも書きましたが、RADWIMPSの野田洋次郎さんや、BUMP OF CHICKENの藤原基央さんは、サビでもそんなに声を張り上げず、クールに歌ってる感じがします。
強い地声は使わず、柔らかい声のままでサビを歌う。感情を強く出しすぎない
特に藤原さんは口をほとんど開けないで歌ったりしますが、ちゃんと声が響いてます
ちょっとタイプは変わるんですが、小田和正さんや、スピッツの草野マサムネさんも、脱力したテンションで歌いますね

対照的な歌手は、ミスチルの桜井さんみたいに口を横に広げて口角を上げるタイプ
だから桜井さんの歌声は明瞭で明るい。クールではなく感情的タイプ
玉置浩二さんはクラシックみたいにバンバン声を響かせながら、そこに起伏のある感情表現を入れていくタイプ。こってりラーメンって感じ(笑
こないだ記事に書きましたが、ブルーハーツのヒロトは(敬称略w)「ハッキリ歌う」ことを自分のスタイルにしているそうです
ヒロトはハキハキ歌いますよね。まるで小学生がストレートに自分の言いたい事を言うように。だからヒロトの歌には「純粋さ」を感じます

昔のボーカルに比べると、現代のボーカルはクールで達観してる雰囲気があるかもしれませんね。米津玄師とか
まぁWANIMAみたいなシンプルなバンドもいますけど

コレはどっちが良い悪いという話ではなく、歌のスタイルってのは多種多様ということです
曲に合わせて歌い方を使い分けられるのが理想です
ボリュームだけではなく、息の量、口の形、開ける大きさ、滑舌などにも注目しましょう
だからこそ歌は面白いんですね

二井原実 × 稲葉浩志 ボーカリスト対談を見た感想

3年くらい前の動画ですが、ラウドネスのボーカル二井原さんと、B’zの稲葉さんの対談の動画です。マサ伊藤が司会してます
ボーカリストとして興味深い話を聞けます

以前の日記にも書きましたが、私はボーカルを研究するときに、「歌ってる声」と「普段の声」を比較します。そうすると発声方法が推測できるからです
あくまで想像ですが・・・

二井原さんは話し声がすでにハスキーボイス
声帯から空気が漏れて仮声帯も振動してる感じがする。声帯の健康的には悪そう
ちょっとハイトーン出しただけでシャウトになるはず
高音は出やすいが、声帯の表面が荒れるとコンディションが変わりそう
喉が太い(後で解説しますが、今は喉仏を下げる意識で歌ってるらしい)
太い喉で、喉仏下げて、枯れた声帯でシャウトしたら、そりゃ外人メタルバンドみたいな声出るわ・・・

稲葉さんも喉が太いし長い。喉仏がデカくて下の位置にある
二井原さんみたいに枯れてない。健康な感じ
声帯がしっかり振動してるので、地声成分が多い
地声は喉によく声が響いていて、声質は低い
で、歌うときは喉仏を上げて歌うんだと思う
普通の人が稲葉さんみたいに歌うと、喉が絞まったハイラリボイスになってしまう
喉仏の位置が低い人なら、ハイラリにしても良い感じになるんだと思う
地声の振動が強いから、ミックスボイスも強く出やすい
激しい曲もバラードも裏声使わず地声一本で歌うのは「男っぽさ」を売りにしてるのかなぁ・・・

・・・たぶんね(´・ω・`)
(ちなみに伊藤政則も喋りのプロだから良い声してる)

この2人の歌い方は普通の人には参考になりません
特殊な喉を持った人間が、特殊な歌い方をやってます。悪く言えばクセの塊
同じようなタイプの人は参考になるでしょうけど、普通の人はマネしないほうが無難

ちなみに私の声は、稲葉さんみたいに地声成分が強いですが、喉が細く、喉仏の位置が高く、地声も高くて軽いです
喉にあまり響かず口腔で響くので、厚みがない声です
だから、稲葉さんとは逆に喉仏を下げるようにして歌って、さらに地声成分が出すぎないように裏声を混ぜるようにしてます
プロの歌い方を真似るんじゃなくて、自分の喉に合った使い方を心がけてます


動画ではいろいろと面白い話をしてるんですが、私がビックリしたのは「2人ともデビュー当時は我流で歌ってて、ボイトレ知識も少なかった」ということ

二井原さんは、「暴飲暴食&過酷なツアーで28歳くらいで声が出なくなって、30代半ばで生まれて初めてボイトレやって、声が改善した
稲葉さんは、「昔はウォームアップ方法を知らなくて、ライブ前に無理に叫んで自滅してた(21:10~)
。。。おいおい(^^;)

14:50~2人ともイヤモニあると良いと言ってますね
モニタースピーカーの音量がデカすぎると耳が遠くなる。耳が遠くなると自分の声が聞こえなくなる。するとガナる(無理に叫ぶ)。すると声が出なくなって、さらに自分の声が聞こえない。の悪循環
イヤモニなら、そういう事はないそうです
このブログでも、ライブやスタジオで歌って疲れる人のために記事を書いてます→こちら

18:00~「リップロールは大事」という話をしてます
私も大事だと思います。以前に書いたリップロールの記事は→こちら

29:00~二井原さん「年齢を重ねるとボーカルは声が衰えてくる。その状態に合った曲をやるべき。と医者に言われた
稲葉さんも若い頃とは歌の感覚が変わってきてるそうです。あれ?と思うことが時々あるらしい
私が思うに、稲葉さんは若い頃よりも地声(普段の話す声)が低くなってる気がする・・・でも若い頃の軽い声よりも、今のほうが良い
最高音は衰えるかもしれないけど、低音~ほどほどの高音までは、昔より厚みが出て良いんじゃないか?と私的に思ってます

41:30~デスボイスについては2人とも経験はないようで、「喉を痛めないで、あんな声が出せるのは不思議」みたいな事を言ってます
デスボはコツさえ掴めば声帯に負担はかけませんし、パワーも不要になります。詳しくは→こちら

58:20~稲葉さんが「日本語でハイトーンを歌おうとすると母音が歌いにくいので苦労する」と言ってます
私もそう思います。母音についての記事は→こちらこちら
以前にも書きましたが、稲葉さんは日本語の発音を英語っぽくして歌ってます。そのほうが、歌いにくい母音を誤魔化せるので高音は歌いやすくなります

特に興味を引いた内容が51:00~55:00の二井原さんの話です
アメリカのレコーディングで英語の発音で苦労した。外人は英語の発音で喉に響かせる。これが日本人にはできない。俺もここ5年くらいで分かってきて、喉の奥(重心の低い位置)で響かせるようにしている。俺はゲロボイスって呼んでる
的な内容です
たぶんコレって「喉仏を下げる」って意味だと思うんですが、二井原さんが言ってる「ゲロボイス」ってもっと深い技術がありそう。舌の使い方や、喉~口の共鳴腔の使い方とか
二井原さんが54:00~実例でやってくれてるんだけど、確かに外人みたいな声が出てる
でも二井原さんの喉が特殊(声帯がハスキーで太い喉)だから、ちょっと参考にならない部分もある


外人は何であんな声が出るんだろう?といつも不思議に思ってます
喉の太さや、声帯の厚みなどの肉体の違いもありますが、発音技術の違いも大きいと思われます

日本人と外人では、母音や子音の数が違うんですよね
日本語の母音は「アイウエオ」だけですが、英語の場合は「ア」の発音だけでも5種類くらいあって、「アとエの中間」みたいな発音もあります
つまり外人は「多彩な喉&舌の使い方ができる」ということです
もちろんコレは歌にも生きてきます

これはいつか詳しく書いてみたいのですが、私自信が英語を話せないんで、書いたとしても、パクリ記事しか書けないんですよね
自分がまず習得しないと、自分の言葉で説明できないので、ちゃんと練習してから書こうと思います

声優やモノマネ芸人は歌も上手い?

声優歌手を兼業してる方って多いですよね
どちらも声を使う職業なんで、共通して使える技術があるんだと思います

声優さんは、喉をコントロールして多様な声を出せます
アニメでいろんなセリフを録音しますからね
例えば、声を枯らして「貴様ぁぁああ!」と叫ぶようなセリフとか、明るい声で「おはよう」とか、怖い声で「我輩に逆らう気か?」とか
これは声帯、喉仏、口、舌を上手くコントロールしないとできません
歌でもこれらのコントロールが重要になります
普段からセリフの練習をしているので、歌詞に感情を込めるのも上手いです(歌に感情を込める方法は→こちら
我々素人もそれなりにセリフを言えますが、プロのクオリティにはかないません

さらに、声優さんは元々の声質に恵まれています
最近よく「イケボ(イケメンボイス)」という言葉を聞きます(外見がイマイチでも、声がカッコイイとモテるらしいです)
以前ハスキーボイスの記事でも書きましたが、「癒される声」「落ち着く声」ってありますよね
「ヒーローっぽい声」の声優さんも、歌うとカッコイイです
まぁ中には「目玉の親父」みたいな個性派もいますけど
声質が良い声優が、ボイトレで練習して、さらにプロがレコーディングする・・・そりゃ~レベルが高くなりますよね

ちなみに私はイケボではありません
声がビリビリして口腔共鳴が強いです。ギャーギャーとうるさい声です
歌でも声がキンキンして、やたらと高音が共鳴してしまいます
なので喉仏が上がらないように注意してます
鼻が詰まって口腔共鳴が強すぎるのかな?なんて事も考えてます

あとモノマネ芸人もすごいです
モノマネも喉のコントロールが必要になるので、歌が上手い人が多いですね

このブログでも何回か書いてますが、モノマネが歌の練習になることがあります
ミックスボイスやヘッドボイスの練習として、ケンシロウ、志村けん、ルパン三世のモノマネが使えます
裏声が出せない人ならハードゲイの「フォーウ!」とか
喉仏を下げる練習なら秋川雅史とか良いかもしれません

注意することは、自分の憧れの歌手の真似をしても、逆効果の場合があります
あくまで「技術のコツを掴むため」にモノマネを使います
以前も書きましたが、基礎が出来てないうちにプロのクセを真似しないほうが良いと思います

デスメタル・ボーカル音源 VOICES OF RAGE

ついにここまできたか(´・ω・`)

デスメタル・ボーカルを演奏できるソフト音源
VOICES OF RAGE

本物のデスボイス・ボーカルの声が録音してあって、それを再生・加工できるソフトみたいですね
ボーカロイドではなく「サンプリング音源」という位置づけです
(初音ミク等のボーカロイドは電子音から声を作っていて、本当の人間が録音しているわけではない)
なので、ボーカロイドみたいにコレに歌詞を歌わせるという事はできないと思います
あくまで録音してある素材の繋ぎ合わせのようです

↑の動画の0:30くらいからデスボイスが入ってますね
DEATHとかDIEとかGODとか繋げるだけで、それっぽい歌詞になってるw
これのボーカロイドとか出たらヤバイな・・・(Θ_Θ;)

歌詞を大切に歌うという事。甲本ヒロトの歌い方

本日は「歌詞を大切に歌う」という事について書きます
以前に書いた「歌に感情を込める方法」や「歌のクセを直す方法」を読んでいただけると、より理解できると思います

まずはこの動画の1:50~見てください
山本晋也と甲本ヒロトの会話です

https://youtu.be/jOb-UE0rtqE?t=114

会話の内容ですが、

山本「ロックって歌詞が何だか分からない。桑田(サザン)なんかの責任もあると思うんだな。日本語をあんなふうにしちゃうってのはさ」

ヒロト「桑田さんや矢沢永吉さんは今までにないスタイルで歌ったからロックだと思う。でも僕が先輩の真似をしたらロックじゃないと思った。僕のスタイルはハッキリ歌うこと

てな感じの内容です
これは何を言ってるかと言うと、日本語の発音「滑舌」のことです

サザンの桑田は独特の滑舌のクセがありますよね(特にライブで)
例えば、「夢を~乗せて~走る~車道」が
「ん夢うぉ~乗ぉせてえ~走るぅ~しゃどぅ」みたいに

矢沢やB’zなんかも、こういう「日本語を英語のように発音する」歌い方をする場合があります
一方ヒロトは、日本語の発音そのままでハッキリ歌ってるんですね

以前も書きましたが、これは「どっちが良い」という事ではなく、その人のスタイルの問題です
日本語を英語みたいな発音で歌うと、歌詞にリズム感が出ます
(詳しくは「歌にリズム感をつける方法」を読んでください)
なので、サザンのような軽快な曲にはこの歌い方が合うんですね
矢沢やB’zも「ロックンロール!イェイ!」みたいな感じなら、英語っぽい滑舌のほうがカッコ良くなります

ヒロトの歌い方は、日本語の発音そのままハッキリ歌うので、歌詞の内容がストレートに心に響きます
歌に感情を込める方法」や「歌のクセを直す方法」に書きましたが、歌詞を大切にして感情表現をするなら、日本語の発音そのままで歌ったほうが良いんです

大事なのは、これらの歌い方を使い分けられるようになることです
使い分けができない人は、しっとりバラードもヒップホップも同じような歌い方しかできません
まぁ「これが俺のスタイルなんだ!」と、同じ歌い方で貫き通しても良いんですけどね

最近のロック歌手は、昔とは違う新しいスタイルの歌手がたくさんいますね
最近の流行はどちらかと言うと「歌詞を大切に歌って、ファルセットやハスキーボイスで繊細な雰囲気を出す」みたいな感じではないでしょうか?
まぁWANIMAみたいなパワー系もいますけど、最近はどのバンドも自然な日本語の発音で歌ってる気がします(英語の歌詞はもちろん英語の発音になる)
ビジュアル系はクセのある滑舌で歌う人が多いですけど

上記でヒロトが言っていたように、「先輩の真似したらロックじゃない」ですから、これからも新しいスタイルのバンドがどんどん出てくることを期待します