感情のこもった歌、感情のこもった演奏って?

感情のこもった歌とか、感情のこもった演奏って、どんなんでしょう?
以前に「歌の感情表現のやり方」について解説しましたが、歌の感情表現は声優がセリフに感情を込めるのと同じテクニックです

これは私の持論になるんですが、「感情表現とは歌で演技すること」だと思ってます
あくまで演技であって、本気で感情を入れるモンじゃないと思ってます

なぜかと言うと、歌の歌詞は喜怒哀楽がパパッと変わったりするからです
その歌詞の内容に合わせて歌い方を変えなきゃいけません
本気で感情移入してたら、それが出来なくなると思うんですよ
(あまり起伏のない曲もありますけどね)

前にも書いたんですが、「感情移入しすぎるとウザくなるので、物語を朗読するように第三者の視点で歌え」と歌の世界ではよく言われます
朗読する人って、本気で感情移入しないですよね?
朗読してる人が途中で「あ、すまん・・・本気で悲しくなって涙出てきた」なんて言ったら物語の進行が止まっちゃいますし

悲しくないのに悲しい声を出せるのが「演技」であり「技術」です
本気で感情移入してないのに、周りの人間が「この人は本気だ」と思わせてしまうのが「技術」です
本気で感情移入してたら「技術」とはチョット違うような気がするんですよね
(まぁある意味スゴイ技術かもしれませんが)


ちょっと話は変わるんですが、ロクに練習しないでライブで歌って、「俺は感情こめて歌ったからOK」みたいな人はどうかと思います
「音楽は感情が大事」→「テクニックより感情」→「練習しなくても感情的にステージで叫べばOK」みたいな解釈です(まぁパンク系はそれでOKなんですけどね)

大事なのはステージ上のパフォーマンスじゃなくて、日頃どれだけ練習して、ちゃんと準備をしてライブをやるかです
それが「音楽に感情を込める」という事だと思います

ミックスボイス判定・・・?

ネットの掲示板なんかで、
自分の声の出し方はミックス・ボイスなんでしょうか?
なんて質問をよく耳にします
で、自分が歌ってる音声をUPして、それに対して詳しい人がコメントしたりしてるんですが・・・
まぁ、なんとなく判定はできるんですが、正確には判断できません

なぜなら、上手い人ほどミックスボイスだか地声なんだか分からなくなるからです

そもそもミックスボイスは、地声から裏声にスムーズに繋ぐ技術です
「いまミックスに切り替えました」みたいな部分が他人にバレちゃいけません
なので上手い人は、ミックスボイスで出してるのに、他人にはずっと地声で歌ってるように聞こえます

つまり「アナタの声はミックスボイスですね」なんて言われるほうが未熟なんです
本当に上手い人の声は「えっと・・・ミックスボイスで出してるんですよね?」ってリアクションになります
一流の歌手の声を聴くと、どこで声を切り替えて、どんな技術を使ってるか?が分析できません
っていうか、たぶん歌ってる本人も分かってませんw
なので他人はもっと分かりません

まぁ、男性で地声からHiA以上の音がキレイに繋がって出てるんなら、おそらくミックスできてるな。とは判断できますけど、単に地声が高い人かもしれません
その人の地声の高さや、裏声を含めた全体の音域を調べてみないと、本当に正確な判断は出来ないってことです
明らかに喉が絞まってるような声を出したり、スカスカのファルセットで歌ってたら、「そりゃダメだよ」と注意できますけどね

ちなみに、「私の歌い方はどうですか?」と聞いたほうが、有益なアドバイスがもらえると思います
ミックスボイス出来てますか?」という質問されたら、ミックスボイス以外はアドバイスいらないの?と思っちゃいます

ミックスボイスができてるけど、歌うとイマイチな人もいます
逆に、ミックスできないけど、歌うと上手い人もいます
ミックスボイスはあくまで技術の一つであって、それが全てではありません

あと、ミックスボイスの定義は人によって曖昧です
B’zみたいなパワフルトーンだと思ってる人もいれば、スピッツみたいなソフトトーンだと思ってる人もいます
あの人はこう言ったけど、別の人はこう言った。みたいな事はしょっちゅうです

最後に、ミックスボイスなのに地声のようにしか聞こえない技術。について少し解説します
地声→ミックスボイス→裏声と切り替わる際、スイッチのように切り替わるわけではなく、中間の段階がたくさんあるわけです。その微妙な段階を使い分けるのが上手い
さらに、ミックスに移行するごとに、声帯がストレッチされて閉鎖も弱くなって、声のパワーが落ちていくんですが、それを声帯から上の共鳴によって上手くカバーしている
「喉仏の位置」「口の開ける大きさ」「舌の位置」「発音のやり方」「呼吸の加減」などをコントロールすると、自分の出したい音域が「ポン!」と響く形があるんです
なので、声帯振動のパワーは弱くなってるのに、口から出る音は芯がある。という感じです

具体的な練習方法はブログの記事をご参考ください

こんな順番でボイトレやれば良いんじゃないかな

こんな順番でボイトレをすると良いかな?という例を書きます
ボイトレは個人個人でやることが違うのですが、ありがちなパターン(声帯閉鎖が強くて高音で力が入りすぎる人)に対する一例です
もちろん全部やらなくても良いのですが、1~8あたりは発声の土台なので、土台ができないうちに下の項目に挑戦しても間違ったやり方になる可能性が大です


歌いやすい正しい姿勢をとる

腹式呼吸の練習。一定の量の息を持続して吐く

手をブラブラしながらリップロール。肩のよけいな力を抜く

リップロールしながら歌って、息をしっかり吐きながら歌う意識をつける

その息をしっかり吐く意識で、歌いやすいキーの曲を「地声」で歌う

息を多めに吐けば地声の声帯閉鎖がやや弱くなってリラックスする
「閉鎖が強い地声」と「閉鎖が弱い地声」の違いを体感する

口の形をいろいろ変えて歌ってみる。縦に開けると「まろやか音質」
横に開いて口角上げると「明るい音質」になることを体感する

喉仏の位置を変えて歌ってみる
下げると低音が響き、上げるとビリビリした音になることを体感する

—ここまでは基本中の基本で、必ず出来るようになること—

喉仏を下げて地声で歌う。喉仏を下げると楽にボリュームを出せる感じを身につける

裏声を出す練習。ファルセットみたいな裏声じゃなくて、声帯表面がちゃんと振動している裏声

裏声を出しながら喉仏の位置を変えてみる。自分の響かせやすい位置を探る

地声と裏声を繋ぐ練習をしてみる。声帯の構造を理解する

ある程度、地声と裏声が繋がるようになったら、喉仏を動かしながらやってみる
例えば、裏声にいくほど喉仏を上げたり、喉仏を下げたまま裏声まで出したり
あるいは喉仏を上げたまま地声を出したり。 いろいろ試して体感する

地声と裏声の中間のミックスボイスで歌ってみる

ハイトーンの曲に挑戦してみる。無声音を意識した脱力ハイトーンを身につける
悪いハイトーンにならないように

歌に強弱をつける練習をする

歌に感情表現を入れる練習をする

正確な音程で歌う練習をする

歌にリズム感をつけてみる

どんな母音でも声が苦しくならないよう練習する

ミックスボイスの強さを調整できるようにする「強めミックス」「弱めミックス」

ベルヌーイ効果を意識してミックスボイスで歌ってみる

特殊な発声を身につけたい人は、ベルティングシャウト仮声帯発声の練習をしてみる

喉の力を抜け、喉を開けってどういうこと?

歌も楽器もスポーツも、「脱力が大事」という言葉をよく聞きますね
ブルース・リーもそう言ってます(´・ω・`)たぶん

しかし、全部脱力したら声は出ないんですよね(笑)
スポーツにおいても歌においても、使う部分を適度に緊張させて、使わない部分はリラックスさせろ。という事です
全身フニャフニャではボールは投げられません

これは私の経験の話なんですが、喉を全部脱力する意識で歌ってたら、ハイラリ(喉仏が上がって喉が絞まる状態)になりました
まぁ裏声に早めにシフトするならハイラリでも良いのですが、私は地声で踏ん張ってたんで、悪い歌い方になってました
つまり、私の場合は喉仏を下げる筋肉に力を入れておいたほうが良かったのです

毎度言ってる事なんですが、その人の発声状態によって、どこに力を入れるか?抜くか?が違います
「力を抜け、喉を開け」というのは、主に声帯閉鎖の力喉仏の位置です

声帯閉鎖:強すぎる人は弱くするべきだし、弱すぎる人は強くするべき
喉仏:ハイラリになってる人は下げるように力を入れるべき。逆に下げすぎの人はリラックスして歌うべき

声帯をストレッチする筋肉は、ハイトーンを出す場合は力が入って当たり前です
(ストレッチと声帯閉鎖は違うので注意)

つまり、声帯ストレッチ筋と、喉仏を下げる筋肉は力が入ってOK
声帯閉鎖の筋肉は適度な力を入れる
顔や口を動かす表情筋も、適度に力が入ってOK
他の歌に関係ない筋肉、首とか肩とかは完全に脱力したほうが良い
という事です

声帯閉鎖や喉仏のコントロールは過去の記事に書いてます
声帯閉鎖(概要)
ものマネで声帯閉鎖のコントロール
喉仏のコントロール

喉を開くという事は、喉仏を下げて、適度な声帯閉鎖さえ意識すれば良いと思います
以前も説明したように、軟口蓋を上げるとか、鼻腔共鳴させろとかは、解剖学的に根拠がない話です。詳しくは→こちら

そもそも人間は、そんなに色んな場所を意識して運動できません
タスク(課題)が少なければ少ないほど集中できるんです
例えば声帯のコントロールの練習をしてる時は、声帯の部分(喉)にだけ集中したほうが良いです
「声帯コントロールしながら、鼻に声を響かせる」みたいな意識だと、いま何をやるべきかを見失います

ボイトレの指導方法。感覚派と理論派

ボイトレにはいろんな指導方法やメソッドがあります
先生によっても違うのですが、感覚派理論派みたいなジャンルがあります

感覚派の先生は、「声を頭に響かせるように」「声を後頭部に響かせるように」「頭の上の風船を割るように声を出す」みたいなイメージ的な教え方が多いです

理論派の先生はそもそも少ないんですが、「喉仏を下げるように」「声帯の閉鎖を弱めるように」「口の形を横に広げるように」と具体的な身体部位の説明が多いです

どちらが良いかは生徒にもよるし、状況によって両方の指導方法を使い分けるのが一番だと思います

ただ問題は、教えている先生が生徒のどういう部分を見てるのか?ということです
感覚派の先生の多くは、イメージだけを伝えて、良い声が出たら「それそれ」みたいな感じです
理論派の先生は、生徒の発声状態がどうなのか細かく分析して、それに対して具体的に改善方法を言います。
ただし、「喉仏を下げて」と言っても伝わらない場合は、「鼻よりも後頭部に響かせる感覚で」とか「胸に響かせる感覚で」と抽象的なイメージの言葉を使うことがあります
それで喉仏が下がればOKということです
しかし感覚派の先生だと、喉仏をそもそも見てない人が多いんですよ
「後頭部に響かせるようにして」と言って、ひたすら声を出させて、良い声が出たらOK!という感じなんです(まぁ先生によって色々ですけど)

すると生徒は、「何をどうすればOKと言われるんだろう?」と疑問が残るわけです。漠然と「今の感覚を忘れないようにしよう」と思うだけです
理論派の先生だと、「いまちゃんと喉仏が下がって声が出たんでOKです」と具体的に教えてくれます

これって野球のバッティングに例えて言うなら、、、
「バット振って100m玉が飛んだら良いバッティングだ。やってみろ」
カキーン!
「100m飛んだな!OK!その感覚を忘れるなよ!」
みたいな教え方です・・・長島茂雄みたいな感じですよね
普通のバッティングコーチなら、下半身の使い方、腰の回転、肘の位置などを細かく教えるわけです

リハビリでの治療もそうですけど、「これ本当に病院の治療が効いて治ったのかな?ただ単に自然治癒する過程で病院に通ってただけじゃ?」みたいな事があります
ボイトレも、本当に指導が効いたのか?単に何度も声を出してる中でコツを掴んだのか?が判断つかない場合があります
良い指導を受けると1発で発声が改善します。「悪い原因はコレだったのか!」みたいな感覚です

感覚派にも理論派にも言えることですが、最終的に大事なのは「ツール(ドリル)」があるか?です
言葉で説明するんじゃなくて、正しいフォームにするための反復練習をさせるってことです。
例えば、呼吸が弱い人にリップロールをやらせたり
声帯閉鎖が強すぎる人に「フ~フ~」というフクロウみたいな声で歌わせたり
喉仏が上がりやすい人に「ぐぉ~ぐぉ~」みたいな喉仏が下がりやすい言葉で歌わせたり

生徒の改善点を見つけて、その悪いクセを改善させるツールをたくさん持っているかが重要だと思います
声帯閉鎖が強い人に「喉の力抜いて!」と言うだけなら誰でもできます

で、その改善点を正しく見つけるのに、正しい発声の仕組みを勉強しないと間違いが起こります
正直、ボイトレの先生は、身体の知識、発声・発音の科学的な理論をほとんど知らない人が多いです
レッスンを受けていて「それって解剖や講音の理論から言うとおかしいんだけどなぁ」と思うことが多々あります

ちゃんとした資格みたいにカリキュラムが統一されてないんで、それぞれの流派で独学でやってるのも問題だと思います
まぁリハビリの世界は国家資格で統一されてても、変な考えの先生が何人もいますけどね
(Θ_Θ;)